マイルス・デイビス
中学生から高校生くらいの頃、「タモリのオールナイトニッポン」という深夜放送をよく聴いていました。水曜日の深夜、1時から3時の番組で、この番組で僕はジャズに興味を持つようになりました。
この番組でマイルス・デイビスという人の名前を初めて聞きました。僕の記憶によれば、それは次のような話でした。
タモリが早稲田大学のジャズ研でトランペットを吹いていて、プロになるのをあきらめた時の話で、その名前が出てきました。それは次のような先輩の言葉だったそうです。
「マイルスのトランペット泣いてるだろ?お前のトランペット笑ってんだよ。」
その話に続いて「泣いているトランペット」が流れてきました。
マイルス・デイビスの「My Funny Valentine」でした。その音楽に表現されるはりつめた空間は、中学生のブラスバンド部員が初めて体験するものでした。当然の事ながら、中学校のブラスバンドではあり得ない音楽性です。
「つぎはぎニュース」とか、「だじゃれのクイズ」とか、「思想のない音楽」だとか、どうしようもなくくだらないコーナーも多く、それが好きで聞いていたのですが、今から考えてみると、この深夜放送で流されていた音楽に、僕は多大な影響を受けました。当時10代だったウィントン・マルサリスを初めて聴いたのも、この番組でした。
当時Milesは活動休止していましたが、高校生のときに「We Want Miles」で復活しました。小遣いをはたいてレコードを買ってぼーっと聴いていたのを覚えています。
そんなに系統的に聴いたわけではないので、「マイルスを語る」ほどの事はできませんが、「マイルス・デイビスとは誰か」とか、「マイルス・デイビス自叙伝I、II」なんてのを読んで、最近、改めて聴き直しています。
「自叙伝」では、強烈な黒人意識を持ちながら、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーにあこがれて同じになれず、自分のスタイルを確立し、なおかつ進歩を続けた様子が語られています。
常に新たなスタイルを求めていた彼が、音楽といかに真剣に向かい合っていたのかがよくわかりました。
その中で、僕は彼が「Sketches of Spain」のレコーディングで、即興性を大切にしていたという話が一番印象に残りました。あの緊張感はそこから来ていたのかと納得できた気がします。
引退したスペインの闘牛士が、このレコードを聴き、音楽に感動し、闘わずにいられなくなり、本当に闘牛用の牛と闘って殺してしまったという伝説があるそうです。
「自叙伝」は非常にリアルで、自慢話がいっぱいです。自信家Miles Davisの面目厄除と言ったところです。
そして音楽の話と同じくらいの割合で性と麻薬が語らていて、リアルさがぐんと増します。
まるで real TVを観ているようです。
テレビだったら「オズボーンズ」(オズボーンズ 1stシーズン <コンプリート> [DVD] )、オズボーンズ 2ndシーズン <コンプリート> [DVD] )みたいになっちゃうのかもしれませんが、マイルスの場合、あまりにすごくて笑えない話が多すぎるかもしれません。
ウィ・ウォント・マイルス
アーティスト:マイルス・デイビス |
My Funny Valentine
アーティスト:Miles Davis |
マイルス・デイビス自叙伝〈1〉 (宝島社文庫)
著者:マイルス デイビス,クインシー トループ |
マイルス・デイビス自叙伝〈2〉 (宝島社文庫)
著者:マイルス デイビス,クインシー トループ |
スケッチ・オブ・スペイン
アーティスト:マイルス・デイビス |
マイルス・デイヴィスとは誰か (平凡社新書)
著者:小川 隆夫/平野 啓一郎 |
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