最近、色々な事に忙殺されていますが、読んだ本を備忘録的にのこしておこうと思います。
多数決を疑う 社会的選択理論とは何か (岩波新書 新赤版1541) [ 坂井 豊貴 ]
最近選挙がありましたが、「多数決は本当に国民の意思を反映しているのか?」という事について議論した本。
単純な多数決で物事を決定し、多数派が自分たちの意見を少数派に押し付けるような物事の進め方は楽ですが、乱暴です。
民意を反映させるための意見集約の方法には、さまざまな議論があり、色々なやり方があるのだということを勉強しました。
スマホ脳 (新潮新書) [ アンデシュ・ハンセン ]
とってもたくさん売れた本、ということで手に取りました。
歳をとってくると、限られた人生の時間をどう使うのか、ということを考えることがあります。
そうした時に、スマホやパソコンをどう使うかはとても大きな分岐点になると思います。
スティーブ・ジョブズはパソコンを脳の自転車のようなものだと評したとありましたが、まさにその通り、と思いました。
石橋湛山の65日 [ 保阪 正康 ]
首相在任期間というよりは、石橋湛山の戦前戦後の歩みと、その人となりについて書かれています。
学生に向かって法華経の一節
「質直にしてこころ柔軟、一心に仏を見たてまつらんと欲して、自ら身命を惜しまず」
を引いて語った言葉
「何らかの前提や思想感情に支配されることなく、心をやわらかにして、世の中のものを見、事に当たるという事であります」
という言葉は印象的でした。
肝臓病を悟る
肝臓病の大御所の半生記みたいな一冊。副題に「劇症肝炎との闘いからわかったこと」とあるように、日本で一番多くの劇症肝炎治療にあたった先生だと思います。
僧侶でもあり、言葉には含蓄があります。
ドリルを売るには穴を売れ 誰でも「売れる人」になるマーケティング入門 [ 佐藤義典 ]
マーケティング入門書。物語と一緒に解説されているので軽く読めました。ベネフィット、セグメンテーション、ターゲット、差別化といった僕にはあまり馴染みのない言葉が並びますが、物語に即して理解することができたと思います。
医師・医学生のための人類学・社会学 臨床症例/事例で学ぶ [ 飯田 淳子 ]
患者さんが医療者の指示に従わず、治療がうまく進まないような場合、「問題の多い患者さん」として疎まれてしまうことがあります。そのような事例を人類学的、社会学的な視点から掘り下げます。
医学教育のモデルコアカリキュラムに準拠していて、それぞれの事例で議論される内容に該当するコアカリの項目、学習目標が示されています。
学生指導の参考になるのみならず、自分の診療を振り返るのにも良い視点を与えてくれると思いました。
うっかりオリンピック [ こざきゆう ]
「え?」と思うようなオリンピックの記録を集めたかるーい一冊。
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる [ 尾原和啓 ]
品質のみでは勝負が難しくなってきた現代において、ワン&オンリーの価値を創造するためにはストーリーを通して共感を得ることができれば強いぞ、ということだと思った。
仕事をするにあたり、Will(やりたいこと) Can(できること) Must(やらなければいけないこと)を皆で共有し、目標達成のプロセスを大切にしていきたいと思いました。
もっとわがままになれ! [ 堀場雅夫 ]
「おもしろおかしく」を社是とする元祖学生ベンチャー企業、堀場製作所の創業者、堀場製作所最高顧問のありがたいお言葉。他人任せでなく、自分の意見を持ちなさい、ということと思いました。
「教育」とは「教えること」と考えがちですが、education(教育)の語源はeduce(引き出す)であるということが書かれていて印象に残りました。なるほど、produce(生じさせる、作り出す)induce(誘発する)などにも「duc」が含まれています。
日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫) [ 半藤 一利 ]
昭和20年8月14日正午から8月15日正午にかけての24時間のうごきを克明におったノンフィクション。
小学校の同級生の祖父君が大活躍していて、「こんな偉い人だったんだ」と思いながら読み終えました。
今の価値観とは相容れないところもあとは思いますが、熱い想いをもって国を想う人たちがいたということを改めて認識しました。
白 [ 原研哉 ]
まえがきにあるように、白という色彩について語った本ではありません。「白」という概念の周辺にある美意識を探る話でした。
吉田洋一「零の発見」を思い出しました。ないものを発見し、位置付けることにより世界が変わります。
白を背景として色が入る時、無と有の際立ちが意識されます。
本書はデザイン的な観点から白とその周辺について考察がされています。長谷川等伯の松林図の何も描かれない空間が鑑賞者の感性を刺激します。
音楽において、間とか静寂がそれと似た役割をしている時があると思いました。
読み終わった後、Miles Davisが聴きたくなりました。
ゾルゲを助けた医者 安田徳太郎と〈悪人〉たち [ 安田一郎 ]
小林多喜二の検死をし、ゾルゲ事件に巻き込まれる事にもなった「医師」安田徳太郎をめぐる物語。
「医者は、芸者、役者とならんで三者というのだ。幇間、つまり太鼓持ちなのだ」
相手がどんな主義主張をもっていいても、同じように接しなければならない。医者ならば、相手がなに様であっても、同じように、診察し、検査し、治療しなければならないとの信念が感じられました。
それを実践したからこそ、結果としてさまざまな事件に巻き込まれてしまったのだろうと思いました。
イスラームからヨーロッパをみる 社会の深層で何が起きているのか (岩波新書 新赤版 1839) [ 内藤 正典 ]
多様性ということを考えさせられた。
西洋とイスラーム、根本的に異なる文化の共生がいかに難しい事かを感じる。
「はじめに」では「2015〜20年にかけて、中東での内戦や戦争の結果、難民の奔流がヨーロッパに向かったことでヨーロッパとイスラームとの共生は不可能な状況に陥っている。」と記されている。
読んでみると、僕たちがヨーロッパと一括りにしている国々で難民受け入れの実情はそれぞれ異なっているようだ。イギリス、フランス、ドイツを代表として説明されているが、それぞれの立場、考え方は異なっている。そしてそのどれもが、自分たちの都合が優先される「共生」だった。国民を定義する基準設定によって成り立つ国民国家のシステムはの限界がそこにあるという。また、一方でトルコという国の存在の大きさを感じた。
米国留学で「多様性のある社会」を実体験してきたつもりだったが、まだまだ知らない「多様性」があるのだなと思う。
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