もう8月も半分終わってしまいました。早いものです。
毎年、夏休みの頃になると思い出すことがあります。
中学校に入学した春、体育館でブラスバンドが演奏した「宇宙戦艦ヤマト」に感動した僕は、ブラスバンドに入部しました。入学式の時には、音楽など全く興味なく、野球部に入ろうと思っていたのですから大きな方向転換です。
入部後、僕はトロンボーンを吹きたいと思いました。3月に卒業した先輩達は東京都でも評判の名手だったと聞いて僕もそうなりたいと思ったからです。
しかし経験も才能のないものにとって現実は甘くありませんでした。
僕が入部した当時、ブラスバンドの練習は日曜日以外、毎日朝練習と午後練習がありました。夏休みも半分くらいは朝9時から昼休みをはさんで夕方5時半まで練習していました。
4月に新入生が入部して8月には東京都のコンクールがあります。ブラスバンド部は前年のコンクールで金賞を受賞していて、クラブ全体が「今年も」という雰囲気になっていました。
通常、ブラスバンドで合奏をするときには一つの楽器に3人あるいは4人の演奏者が必要です。これは和音を構成するためだと僕は理解しています。金管楽器、あるいは木管楽器は一つの楽器で一つの音しか出せません。一人でメロディを奏でる時はいいですが、それ以外の時で、例えばドミソの和音を奏でるために3人必要なのです。
トロンボーンは中低音領域を担います。かなり大きな音を出す事ができ、合奏全体をささえる役割をしますので、安定した和音をしっかりと作ることが大切です。
ところが、僕が入部した時、トロンボーンを吹いていたのは3年生のKH先輩、2年生のNT先輩、二人だけでした。
当然の事ながら、もう一人の演奏者を促成栽培する事が急務です。
一年生は僕とKR君の二人です。KR君は僕よりも体が大きく器用で音楽的センスもあり、度胸も備わっていました。当然彼の方が上達が早く、彼がコンクールの舞台に上がる事になりました。
僕はKR君と並んで楽器を嫌でした。だって明らかに彼の方が上手なので、その差に先輩が笑っちゃうほどなのです。
夏休みになるとコンクールに向けた練習が中心になります。舞台にのる人達が練習している間、一年生は自主練習をする事になります。
技術にひけ目を持っていた僕は、技術的な練習を殆どやりませんでした。ロングトーンと言って、同じ音を「ぶううううううっ」と吹き続けるだけでした。これならKR君と大した違いがありません。水泳をやっていたので肺活量には多少自信がありましたので、長く音を出しつづけるための努力にはあまり苦痛を感じませんでした。
コンクールは一年生が舞台に上がっていたにもかかわらず、2年連続金賞という最高の結果に終わりました。僕の劣等感は相変わらずでした。
ところが、夏休みが終わった頃、コンクールを終えた先輩達と久々に一緒に練習をした時、変化が起こりました。
技術的な練習から逃げた結果であったのですが、ロングトーンしかやらなかったおかげで僕の出す音が目に見えて良くなっていたのです。自分では全く気づいていなかったのですが、先輩達の驚きは大きかったようです。
結果として、そこでほめられた時に味わった感情が、その後のモチベーションを持続させる源となりました。
その経験からでしょうか。目標が定まらない時でも、いつもなにかしら地道な努力を続けていたいと感じています。
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