読書「奏鳴曲」
北里柴三郎と森鴎外の二人がかすかに触れ合いながら、互いの道を歩んでいく。二人をライバルとみたてて紡ぎ出されるストーリー。
とにかく熱い北里と、蝶のようにひらひらと華麗に舞うことを願う森。
自分のなかでは、北里がベルリンに留学している13歳下の荒木寅三郎に贈った言葉が印象的で、自分の仕事への向き合い方について考えさせられた。
曰く「世の中は行き詰まらぬ。行き詰まるのは本人に熱と誠がないからだ。熱と誠があれば何事も成就する。」
熱と誠で頑張っていきたいと思う。
そして、本書で描かれている医学的事項の中心は感染症。感染症との戦いは当時から存在していた。
何しろ北里柴三郎は血清療法の可能性を世界で初めて示した人で、数々の業績から「日本の細菌学の父」とも称される。ここでは正しかったことだけでなく、失敗だったエピソードも描かれる。
また、当時の感染症対策の失敗などは、現代のコロナ政策への批判のようにも感じられる。でも、まてよ、同じことを繰り返していると言う点で、殆ど進歩していないのかもしれない、と思った。人類の進歩なんて、大自然の力からすれば、ほとんど取るに足らない程度の「進歩」なのだろう。
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