一人ラーメン 胃もたれの夜
20歳のころ、あんまり食べるから、周囲からは「満腹マシーン」とか呼ばれていた。胃もたれ、なんていう言葉の意味がわからない、と思っていたくらいだ。蕎麦屋に行って、カツ丼→ざるそば→カツ丼、を一人で食べていた。
当時の僕は、今より20kg以上太っていた。でも、あれから30年、ダイエットして、食事はだいぶ細くなったと感じている。いいことだと思うのだが、時々、ほっぺたいっぱい、はらいっぱい、の興奮を味わいたくなる。
その日の僕は、ちょっとそんな気分だった。
時間があいたので、寄り道をして、横浜家系某有名店を初体験することにした。
平日夜9時半頃だったが、店の外に20人程は並んでいた。食券を先に買って並ぶシステムだ。購入したのは大盛りラーメン、味普通、脂普通の麺固め。お腹が空いていると、習慣的に大盛りを頼んでしまう。野菜100円を頼もうと思ったけれど、大盛りラーメンが930円で、小銭を持ってなかったので諦めた。野菜よりも大盛りの誘惑に負けてしまった。
あらためて列の最後尾に並ぶ。長く待つのかな、、、と思ったけれど、列の進みは結構はやい。店先の当番をしているらしいお兄さんが手際良く10人くらいずつまとめて店内に案内している。その昔、恵比寿にあった名店では、長蛇の列の客からメモも取らずに注文をとるお兄さんがいて、全く間違えずに注文した品が供されるのでとても驚いたのを思い出した。
店は外から見ると広そうには見えないが、店の奥行きがかなりあって、意外に多くの客が入れるようだ。そして厨房がこれまた広く、5−6人の威勢のいいお兄さんたちが忙しそうに働いていた。この回転の良さがラーメンのいいところ、と思いながら待っていた。20分ほど並んだだろうか。店内に通された。
食券を先に買ってあるからだろう。
予想よりも早く着丼。待ってましたとテンションが上がる。
予想よりも濃い黄土色のスープ。味も匂いも力強い。
予想よりもちょっと細くて短い平打ち麺。負けていない。
重厚なストレートパンチが胃を直撃する。かなりお腹が空いていたので、僕の胃袋は真正面からこれを受け止めた。周囲を見ると、ラーメーンだけでなく、ご飯とか野菜とか頼んでいる人が多い。それも納得できる。油の量はやや多いが、好みだろう。
海苔はスープに溶け込むようなタイプではなかった。私は海苔だ!としっかり主張する。今回、ご飯は頼んでいないけれど、この海苔でご飯を包んで食べたら、スープの味が絡んで、まぁ、美味しいだろう。ラーメンがおかずと化す瞬間だ。
チャーシューは柔らかく、脂身の少ない肉でしっかりと肉の繊維を感じたが、主張は少ない気がした。スープ、のり、ほうれん草、麺がそれぞれ主張する中、やや地味な印象だが、逆にこの静かな感じがいいのかもしれない。
どんぶりの残りが半分弱となってきたころ、ストレートパンチの連打に僕の胃袋が疲れを見せ始めた。机の上には、おろしにんにく、ニンニクチップ、ごま、ショウガ、酢などが置いてある。どれを使って味をかえようかなぁ、、、。まわりを見渡すと、これらに手をつける人は予想以上に少なかった。みんな若いねぇ、、、、。そんな人たちと張り合う余力は、僕の胃袋に残されていなかった。
前半戦はがっつりいったけれど、今の僕の体力では、このラーメンの力強さに最後まで立ち向かうことは難しいと感じた。大盛りを頼んでしまったからかもしれない。でも、お酢を少々たすと、味がさっぱりして、後半戦も楽しみながら食することができた。
その夜の胃もたれは、食べたラーメンがハードパンチャーであったことを改めて実感させるものだった。
手強い相手だったので、しばらく行かないと思うけれど、そのうちにまた行きたいと思うだろう。そういうインパクトのあるラーメンだった。次回は普通盛り、脂少なめ、味薄めでいいな。それにご飯、野菜を頼もうか。
あらためて思うけれど、この僕が、、普通盛り、油少なめ、味薄めを頼もうと考えるなんて、我ながら歳をとったものだと思う。
でもまだ食い意地が張っているのだから元気な証拠だと、自分に言いきかせている。
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