理科系の作文技術
『理科系の作文技術 (中公新書 (624))
』を読みました。30年以上前に最初に出版された、多分、この手の本では古典的名著と言っていいものだと思います。今でも版を重ねて販売されています。最新版は2014年2月の第79版!超ロングセラーです。
僕は今もっている本で3冊目です。前の2冊はボロボロになるまで読んだわけでなく、引っ越しなどでなくしてしまっただけですが、、、。でもやっぱり良い本だと思います。
本書はウィンストン・チャーチルのメモから始まります。
『我々の職務を遂行するには大量の書類を読まねばならぬ。その書類のほとんどすべてが長すぎる。時間が無駄だし、要点をみつけるのに手間がかかる。同僚諸兄とその部下の方々に、報告書をもっと短くするようにご配慮願いたい。』
ここの部分だけなら何度も何度も読みました。何度も通読に挫折しているので。(お恥ずかしい)
最初に読んだのは、研修医が終わる頃でした。研修病院で大変お世話になった腎臓内科の先生が餞別代わりにくださいました。
「『理科系』の、とありますが、私は日本語の本として良い本だと思います。」
そう言われて手渡されました。当時の僕はこの本の良さがワカリマセンでした。チャーチルであっけなく挫折。その後、何度かトライして読破するも、そのまま紛失。数年後にもう一度読もうと思って購入するも、読了後、再び紛失。
そして今回。やっぱりもう一回読んでもいいよなぁ、、、なんて思って購入しました。
やはり、チャーチルの手紙は読むたびに新鮮です。そこから先も改めて勉強になりました。
題に「理科系の」とありますが、先の先生の言に違わず、達意の文章の書き方が丁寧に説明されます。
文章の組み立てや、パラグラフの作り方等に加え、日本語の特徴に配慮した文の構造と文章の流れについても詳述されます。
そして、事実と意見を明確に分け、わかりやすく簡潔な表現を常に心がけることの大切さを、実例をもって示してくれます。
『同じ前提から出発して同じ結論に到達する論理の筋道は必ずしも一つではない。』
『最後まで読まないと結論が見えないような書き方はさける』
『理解できるように書くだけでなく、誤解できないように書かなければならない。』
『読者に向けて書くべきもので、著者の思いをみたすために書くものではない。』
などのフレーズは印象的でした。肝に銘じたいと思います。
また、30年前手書きの時代に書かれたものなので、「文章を書く」ということへの気構え、真剣さが違うと感じました。
『一語一語の目方を秤りながら書く心掛けが必要だ。』
なんてセリフは今のワープロベースの文章作成術には出てこないフレーズだと思います。でも、そのくらいの真剣さをもって書いた文章でなければ伝わらないものもあろうかと思います。
「古典の良さ」を感じることができました。今度はなくさないようにしないと、、、、。
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