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「コンテナ物語」

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった 」を読みました。

書評でビル・ゲイツ氏が絶賛していたというのを見て、読んでみようと思いました。テーマはとても地味なものです。最近約半世紀の間におこった物流の変化を「コンテナ」という視点から丁寧に描写したものです。コンテナなんて、僕の生活からはとても縁遠いものです。何かのニュースでみるか、貨物列車などで遠目に見ることぐらいしかありません。ですが、それに対するイメージは本書を読んで大きく変わりました。

「経済のグローバリゼーション」という言葉はよく聞きます。でも、それが具体的にどのような形でおこってきて、過去と現在がどのように異なっているのかなんて、全然わかりません。それが、本書を読んでよく実感できました。
一つの例として、本書の後半で、米国を代表する玩具の一つ、バービー人形を支えるサプライチェーンが示されます。僕はこれまで単純に「中国製」だと思っていました。

実は彼女、すごい多国籍なのですね。

ナイロンの髪の毛は日本製、ボディに使う樹脂は台湾製、染料はアメリカ製、木綿の服は中国製。そして製品として組み立てられるのが中国というわけです。

これが実現できるということは、それぞれのパーツ、製品の輸送や在庫にかかるコストが殆ど問題にならないことを意味します。
輸送コストが高額なら、物理的に近い場所ですべてを調達する必要があります。そして遠隔地で販売するためには生産地の値段に輸送、在庫のコストをくわえてより高額で販売せねばなりません。

輸送、在庫のコストが削減されて、正確な日時に部品を安く届けられるようになれば、距離は問題ではありません。たとえ地球の裏側に注文したとしても問題ない事になります。品質、値段のバランスが最も良いパーツを世界中から集めてきてそれを組み立て、世界中に発送するということが可能になります。しかも価格は世界中均一。
これが実現されるために必要だったのが「コンテナ」であったというわけです。

原題は「How the shipping Container made the World Smaller and the World Economy Bigger.」「運送用コンテナはいかにして世界を小さくし、世界経済を大きくしたのか」です。邦題として適切かどうかとは別にして、本書で語られているのは本当にその通りのことです。

そこに大きく貢献した個人がいます。コンテナ輸送を想起し、実際に実用化にこぎ着けた実業家マルコム・マクリーンです。彼が最初のコンテナ船を出航させたのは1956年でした。でも、生産者から消費者に至までの、様々なものの流れを効率よく管理する過程で、同じ規格の「箱(コンテナ)」に詰め込んで管理し、適切な場所に配送するシステム、そんなものが最初から想定されていたわけではありません。現実はたやすくありません。コンテナ輸送の普及に抵抗する様々な動きがありました。

コンテナを用いた物流システムの有用性は、ベトナム戦争における後方支援活動において証明されました。「ロジスティクス」は、先頭に置ける後方支援を総称する「兵站」を表す軍隊用語だったのが、今では「サプライチェーンプロセスの総体」を意味するものとなっています。

しかし、それだけでは現在のシステムは実現しませんでした。さらに価格が下がる必要がありました。そのためにはビジネスの巨大化、荷主と海運会社との力関係の変化など、イロイロな要素が必要でした。

そんなわけで、現在のようなコンテナ輸送の普及とサプライチェーンの発達を正確に予想した人はいなかったようです。今では予想が外れたことを認めねばならないような予想論文を執筆した学者達はもとより、コンテナ輸送の可能性をいち早く見抜いていたマルコム・マクリーンでさえ、発展の方向性を読み誤り、大きな損失を計上したこともありました。

それでも世の中はコンテナ輸送が効率よく低コストで機能する方向に変化を続けてきました。この変化に関して、効率が良いとはとても言えません。外的要因の影響を大きく受けています。様々なアイデアが試され、消えていきます。今後もそう言う形で進歩していくのでしょう。このような事象の全体像を把握するために個人に焦点をあてるのは間違いです。それでは全体を把握できません。

でも、オーガナイズされて進歩してきたわけではないので、全体を俯瞰するような視点で作成された資料は残されていなかったようです。このため全体像を把握することは極めて難しく、物語の構築には大変な労力が必要だった事と思います。なにしろ巻末の参考文献は80ページにも及びます。

全文を読んでから前書きを読むと、筆者はイロイロな人に感謝の気持ちをのべていますが、それも宜なるかなという気がします。
あらかじめ語られているストーリーのないところに光を当て、資料を集めて一定のストーリーを紡いだ立派な仕事だと思いました。

こう言う開拓者的な仕事というのは地味であっても、エキサイティングなことだと思いながら読み終えました。

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