STAP細胞について思うこと
小保方先生の出現は、山中先生に続く、新たなスター誕生といったところでしょう。リケジョ、というのもマスコミ受けがいいですね。
iPS細胞の最初の報告はネズミでした。この時、科学者の間では「Dr. Yamanakaがホームランを打ったらしい、、、。」という話がありましたが、マスコミで大きく取り上げられることはありませんでした。
マスコミが騒ぎ始めたのはヒトのiPS細胞ができてからだったように記憶しています。
今回は同じネズミの細胞なのに、最初からこの騒ぎです。
山中先生らの業績にって再生医学の興味が刺激された結果、マスコミを含む我々に、このニュースを受け入れる準備ができていたということでしょう。この点でも「iPS細胞→ノーベル賞」の功績は大きいと思います。
今回の成果は生物学的な意義の大きさもさることながら、様々なイマジネーションを広げる「わかりやすさ」と言う点でも大きな成果だと感じています。
新しい細胞はSTAP細胞(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells:刺激惹起性多能性獲得細胞 )と名付けられました。論文では酸によるストレスのプロトコルが示されているので「酸」によってという事になっていますが、名前は「ストレス」によってとなっています。小保方先生が最初にこのアイデアを想起したのは物理的刺激による細胞の変化だったようです。
実は僕も、過去数年間、細胞にストレスを与えることで性質が変化することをテーマに実験をやってきました。僕の場合は熱ストレスでしたが、確かに細胞の性質は変化します。それも、幹細胞に近づくように。
その結果については何度か学会発表したりしたのですが、僕に力がなくて、論文は結局リジェクトばかり。その間に僕たちがやっていたのとそっくりの方法論だけれどももっとずっと洗練された論文が昨年5月に発表されてしまいました。
かなり悔しい気持ちになりましたが、以来、このテーマは僕の中でお蔵入りとなっていました。
今回のSTAP細胞の発表を見て、「自分は意外と近いところにいたかも知れない」なんて思いつつ、自分の力不足を改めて感じています。
でも自信を持ったところもあります。
「意外と近いところにいたかも知れない」と感じたそのアイデアは、患者さんの診療を通して得られたものでした。
僕たちが研究をすることにおいての正道は、患者さんを一生懸命診察して、体の中で何がおこっているかを一生懸命考えるところから、真実に迫れるようなアイデアを得ていくことだと、僕は思っています。そうでなければ基礎医学、基礎生物学の研究者の方々に太刀打ちなどできませんし、そういった正道を貫く姿勢にこそ、臨床医が研究や実験をする意義があるのだろうと思います。
その「姿勢」に加え、それをいかに形にするか、、、その「力」をもっとつけていきたいと思います。
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