東京オリンピック最終プレゼンテーションの素人的感想
東京オリンピック招致のための最終プレゼンテーションは8人のプレゼンターによってなされました。プレゼンターの方々の感想等を聞くと、「各自が自身の役割をきっちりとこなしてチームとして最高のパフォーマンスをした」、といったコメントが散見されます。
また、そのプレゼンテーションがIOC委員の方々から高評価だったという声は断片的に聞こえてきます。
同時に、第三者的な視点からの、一つ一つのプレゼンテーションに対する評価、感想などは多く見られます。どのプレゼンテーションが一番印象的だったかとか、プレゼンターの身振り手振りとか、「お・も・て・な・し」とか、、、。
それらを見聞きしていて、僕は、プレゼンターの感想がチーム、全体を意識したものであるのに対し、受け手の感想の多くは断片的なものへの感想を述べているように感じました。
プレゼンターの感想を聞いて僕が知りたいと思ったのは以下のようなことです。
このプレゼンテーションにおいて、どのようなメッセージをIOCメンバーに伝えるため、どのようなアプローチ戦略が考えられていたのか、各プレゼンテーションがどのような役割を持っていたのか、各プレゼンテーションはいかにしてつなげられていたのか、、、。
そんなことを具体的に知りたいと思いました。でも、プレゼンテーション全体を俯瞰してその構造を解析した解説をネット上で見つけることができませんでした。
なので、大変おこがましいですが、自分なりにこのプレゼンテーションを解釈してみることにしました。
参考にしたHPは「こちら」です。
まず、プレゼンターを概観すると次のごとくです。
1.高円宮妃久子さま・冒頭ご挨拶
2. 佐藤真海選手(パラリンピアン)
3. 映像上映 - Feel the pulse
4. 竹田 恆和 (招致委員会理事長)
5. 水野 正人 (招致委員会副理事長/専務理事)
6. 競技会場映像上映(小谷実可子) - Venues
7. 猪瀬 直樹(東京都知事/招致委員会会長)
8. 滝川 クリステル(招致“Cool Tokyo”アンバサダー)
9. 映像上映 - Pulse of the city
10. 太田 雄貴(オリンピアン/招致アンバサダー)
11. 安倍 晋三首相
12. 映像上映 – Share the pulse
13. 竹田恆和(招致委員会理事長)
各プレゼンで用いられた言語を並べるとこうなります。
1.(フランス語・英語)
2. (英語)
3. 映像
4. (英語)
5. (英語・フランス語)
6. 競技会場映像(英語)
7. (英語)
8. (フランス語)
9. 映像
10. (英語)
11. (英語)
12. 映像
13. (英語)
高円宮妃久子さま、滝川クリステルさん以外に、水野副理事長も、プレゼンの最後、締めの部分にフランス語を使われているのですね。わざわざ『フランス語でこれを言うのは初めてだ』と前置きまでしてフランス語を使っています。なぜそうしたかは明白です。滝川さんのプレゼンにつなぐため。
フランス語が出てくるのは1番目、5番目、8番目です。いかにIOCの公式言語が英語、フランス語とされているとはいっても、しゃべりのプロが、一人だけフランス語で印象的なプレゼンをすれば、全体から遊離しかねないでしょう。滝川さんのプレゼンが全体から浮かないようにするためには、他の誰でもなく、水野副理事長の順番でフランス語が出てくる必要性があったのだと思います。高円宮妃久子さまのスピーチがなければ佐藤選手のプレゼンにフランス語が入っていたかもしれません。そんな気がします。
次に内容を見てみます。多分、全体の構造はこうなっています。
Part 1:1~4:スポーツの力、オリンピックの価値
Part 2:5~7:実現
Part 3:7~10:TOKYO 2020が提供するもの
Part 4:10~12:オリンピックの価値を世界に広め、次世代に継承していく約束
Part 5:13:まとめ。東京に投票を!
多くのパートで用いられているのが、現実と理想を往復すること。これによって説得力を高めているのだと思います。
Part 1では、震災復興におけるスポーツの貢献から始まります。
高円宮妃久子さまの、東日本大震災被災者支援におけるIOC貢献に対する謝意に始まり、パラリンピアンの佐藤選手が自分がスポーツの力によって救われた個人的体験を語ります。個人体験が復興とスポーツの力、オリンピックの価値を結びついてゆきます。
そして映像により、スポーツが持つ力の映像によるイメージ化されます。震災後の東日本を想像させるような荒地で1人でバスケをする男の子が、オリンピアンを想像させるバスケットボール選手からから力をもらいます。少年は選手からもらった赤いリスバンドを握りしめます。
竹田理事長によってスポーツの力、オリンピックの価値という理想を広めることが約束されます。
Part 2は生々しい話です。
まず、水野副理事長から、実業界からのスポンサーシップによるサポートの保証がなされます。このまま予算の話に行ってしまったらうんざりしそうですが、その間に小谷実可子さんの映像による開催計画が紹介されます。こんなことが実現できるぞ、という具体的イメージです。
その後に猪瀬知事から大会開催のための経済的保証がなされます。リアルに実現可能なプランなんだぞ、と強調します。
僕が思うに猪瀬知事のプレゼンはPart 2の締めくくりであると同時に、Part 3の始まりでもあります。
Part 3はTOKYO 2020が提供するものについてのプレゼンです。
猪瀬知事はそのカネによって『インフラ、スポーツへの投資、大会後のスポーツ政策』を提供できると約束しました。滝川クリステルさんは『心、お・も・て・な・し』を提供することを約束しました。太田選手は東京はスポーツに光をあて、情熱を与えてくれることを約束しました。
太田選手のプレゼンはPart 4へのつなぎでもあります。スポーツを通し、その情熱が広まり、次世代へ受け継がれることを語ります。
映像ではその情熱が様々な人種の様々なスポーツ選手、次世代に伝わっていくさまがイメージされます。
Part 4の主役は安倍首相です。安倍首相は 自らのオリンピック体験を通し、首相はその価値を信じていることを語ります。オリンピアンでない普通の日本人も、過去のオリンピックによってその価値を認め、信じていることを訴えたのです。そして、日本がそれを世界に広めてきたことの実績を紹介し、これからも発展させていくことを約束します。
この流れを受け、最後に竹田理事長が再び登壇し呼びかけます。個人の経験談に始まって、理想を語り、実現性を語り、個人の経験談にもどり、将来を約束します。
『我々はオリンピック・ムーブメントの信奉者である。』
『東京、日本は、それを確実に引き継ぎ、発展を実現できる。』
『東京に投票を!』
竹田理事長の話にはオリンピアンの被災地訪問の話も出てきます。最初から最後まで、全てがつながっていることを、最後に改めて確認できることが説得力を増していると思います。
僕が言うのはおこがましいですが、僕なんかが気づかない工夫がまだまだあるのでしょうけれど、それでも、よくできたプレゼンテーションだと思いました。
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