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堅苦しいこと言わずとも、面白いものは面白いのです

「キャプテン」の続きです。その前半部分には「体罰」が描かれているコマがあります。

谷口くんが野球のことで頭がいっぱいになり、授業でトンチンカンな答えをしてしまったため、水の入ったバケツを両手に持って立たされてしまうのです。このような「怒られて立たされる」というのは、かつてのマンガなどではお約束の展開だったような気がします。実際、犯してしまった過ちと、その結果としての体罰がダイレクトに結びついています。間に説明のコマはありません。

そして、少なくとも、その表現に現代において議論されている「体罰」の雰囲気はありません。

谷口くんの顔は恥ずかしそうな表情で、やや赤らんでいるように描かれていますが、そこに悲惨さ、苦痛は全く表現されていません。当然のように体罰を受け入れています。背景にはクラスメートの「アハハハ、、、」という笑い声も描かれています。そこに陰湿な雰囲気はありません。体罰を課す側も課される側も、了解している様子が見て取れます。

おそらく、「このくらいの過ち」には「このくらいの体罰」というのが暗黙の了解として存在していたのでしょう。ある種の「常識」だったと言えるのかもしれません。だから、水バケツを手に立たされる谷口くんも当然のこととして描かれています。たった一コマで。

僕は体罰を肯定するつもりはありませんが、そう遠からぬ昔、そういう世の中であったということは認識すべきと思います。

その後、時代の移り変わりとともに、体罰についての暗黙の了解が徐々に消滅してきました。多くの人に無意識的な変化がおこる時、その度合いは人によって様々であることは容易に想像できます。だから今、改めて共有できる価値観を構築することが必要なのだろうと思います。このような場合の手段として言葉はとても有用です。

慣習に基づく行動は、10年程度の単位で見ていくと多くの場合、無意識的に変化していきます。

僕が思うに、一定の価値観に基づく行動は、中心となる世代がうつりゆくにつれ無意識的に変化していきます。その時、上記の体罰に見られるような価値観の変化がその根幹を成す場合もあるかと思います。

そう思ってみると、「キャプテン」は、確かに、一時代前の価値観に基づく「スポ根漫画」です。

野球は日本に輸入され、「ベースボール」から「野球」になりました。それについてはこれまでにも、「ベースボールと野球道」「ベースボールと日本野球」「野球道」などでの感想文に書きました。最近では米国のマスコミもそのような視点から報道をすることがあるようです。(日本経済新聞記事のリンクはこちら、ESPN記事のリンクはこちら

日本の野球文化における「野球道」は飛田穂洲によって提唱されました。桑田真澄氏によれば、これは戦中の野球害毒論から野球を守るためであったと言います。そしてそれは、「練習量の重視」「精神の鍛錬」「絶対服従」の三点に集約されるそうです。

「キャプテン」においても練習量への信仰がみてとれます。谷口くんはその練習量でチームを一つにまとめあげます。イガラシくんは部員全員で泊まり込み合宿を敢行し、朝から晩まで野球づけの生活を送ります。精神に関して言えば、彼らは毎試合、ぼろぼろになるほど頑張ります。また、谷口くんは、指が曲がってのびなくなってしまうほどの怪我をおいながら、めげることなくプレーを続けます。「絶対服従」が強烈に表現されている箇所は記憶にありませんが、同じ中学生なのに、「キャプテン」の決めたことに対する他の部員の行動は確かに服従が前提となっているように思えます。

桑田氏は「野球道」を時代に合わせて再定義する必要があると指摘し、「練習の質の重視(サイエンス)」「心の調和(バランス)」「尊重(リスペクト)」を重視することによりスポーツマンシップを涵養することを主張しています。(そのリンクはこちら。)求道者の価値観も変容していくものなのかもしれません。

考えてみれば「体罰」は教育を目的とし、「練習量の重視」は技術向上を目的とした手段、方法論でしかありません。本質的な目的を追求する方法論は時代とともに変容して当然です。

でも「キャプテン」に描かれているような、あきらめることなく、努力を惜しまず、全力を出し切ろうとする彼らの「ひたむきさ」に高い価値をおく考えは時代を超えて存続して欲しいと思います。

そんなことを思って、「キャプテン」全巻を長男の今年の誕生日プレゼントにしました。

我ながら押し付けがましいオヤジだと思いましたが、大変好評だったので少しホッとしました。まぁ、そんな堅苦しいこと言わずとも、面白いものは面白いのですね。

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