健康管理、いつやる?
最近、巷で
いつやる? 今でしょ!
という言葉をよく耳にします。
もともとは予備校の先生の言葉のようですが、まぁ、歯切れが良かったり、インパクトがあったり、後回しにする後ろめたさみたいなものを鋭くついていたりするので、色々な場面で使い勝手が良いのでしょう。
もう、大昔の事になりますが、僕が受験生だった時は『「やらない」でそれなりの点を稼ぐのがカッコイイ』ような気がしていたように思います。
同じ努力量で勝負をするんだったら負けない。「やればできる」そんなの当たり前。「やらないでできる」のがカッコイイ。
そんなことを思っている受験生は結構多いと思います。「やればできる」と思っているだけで、結局「やらない」受験生はとても多いのでしょう。泥臭い努力をすることへの「照れ」もあるかもしれません。
そのような人へのメッセージとしては
「いつやる?今でしょ!」
はとても適切だと思います。
受験は期日が決まっていて、それまでの期間にたくさん勉強した方がいいに決まっています。その時その時で何をすべきかは、学校や予備校が提示してくれます。それをこなしていけば良いのです。できるだけたくさん。
でも、多分、一般論としては通用しないのですよね「今でしょ!」は。
なぜか。
まず「何をやる?」が大切だから。
世の中は不確定なことであふれています。僕たちはその不確定さを取り除き、確実なものとするために様々なことを行います。やれることは全部やった方がいいに決まっています。でも全部はできないのです。
健康診断を例にとってみます。健康診断はその名の通り、「健康」を「診断する」ものです。でも、その健康診断は来年の健康を保証してくれるわけでも、検査していない項目の「健康」まで「診断」してくれるものではありません。
もうちょっと「詳しい健康診断」に人間ドックが挙げられます。でもこれもイロイロなオプションがついていたりして、なかなか「全部」というわけには行きません。
時々「全部検査した。」と胸を張るかたもおられますが、「世の中に存在する検査全てをうけた」わけではないですね。一定の範囲内で、一定の判断のもと、妥当と判断される検査に関して「全部」検査したということでしかありません。
これらは全て、現在の「健康」を検査項目の範囲内で、一定の確率で保証してくれるものでしかありません。検査している項目ですら、その診断能は100%ではないのです。
世の中にはそれらの検査では診断のできない病気も沢山あります。しかしそういったものは数少ない例外として扱われます。だから検査項目には入ってきません。せいぜいオプション検査に組み込まれるくらい。
また、一般的な検査で診断できる病気だったとしても、その病気に将来いつかかるのか、かからないのかを予測することはまず不可能です。たまたま周囲に誰もいないなど、悪いタイミングで突然発病して大事件に至ることもあります。
毎年人間ドックを受けているのに、一年後、前年とは別人のようなデータになって受診される方も時々おられます。どうしてもっと早く、、、と思いますが、ご本人は気づかなかったらしいのです。もしかすると、「毎年ドックでチェックしているから健康は大丈夫!ただ疲れがたまってるだけ。」と考えて頑張ってしまうのかもしれません。
そういったことまで考えると「例外」のバリエーションはほぼ無限です。
そのリスクをゼロにすることはできません。低くすることはできます。
ストレスの少ない規則的生活を送り、定期的に運動し、過剰な塩分、過食を避け、高カロリーを控えめにし、食事のバランスに気をつけながら野菜を多く摂取する。定期的に体重、血圧をチェックし、毎年健康診断を受ける。異常が指摘されれば日常生活の中での改善に努め、不可能であれば内服加療等を行い、定期的にその治療効果、副作用に対する評価を行っていく。加えて体調が悪ければ早めに受診をして適切な検査をうける。
まぁ、そんなところでしょうが、やっぱりゼロにはなりません。
限りなくゼロに近づけようとすれば、社会生活を送らず、人ごみを避けて生活すれば感染症に罹患する確率は下げられます。最近では鳥もあぶないかもしれません。加えて心電図、呼吸、血圧、体温等のモニターを装着し、24時間態勢で体調を誰かに監視してもらえばいいかもしれません。
でも、あり得ませんね。普通。そんなことを希望するとすれば、それはパラノイアと言わざるを得ません。
健康管理、いつやる?
今でしょ!
24時間態勢の体調監視、いつやる?
やらないでしょ!
健康診断(人間ドック)いつやる?
(絶対やるけど)後でしょ!
一定のリスクが存在することを認識しつつ、「何をいつやるか」「何をやらないか」を決定せねばなりません。
例外的に「運の悪い結果」となってしまった場合にも、その「結果」と未来志向で向き合っていくためには、その辺の所をよく考えておく必要があるのだと思うのです。
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