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阿蘇・黒川温泉における時間可塑性について

黒川温泉は熊本県阿蘇郡小国町にある、山間の小さな温泉郷です。僕たちは子どもたちの春休みに、桜の咲き始めた早春の黒川温泉を訪れました。

僕たちの宿「樹やしき」は、黒川温泉の温泉街からちょっとはなれた、本当に山の中の宿でした。このため、部屋、露天風呂にはこんな文言が掲示されていました。

『わたくし共の樹やしきは自然の中に佇んでいます。この季節は小さな虫さんたちも、くつろぎたいのかお部屋に遊びにくることもございます。あみ戸はなるべく開けないよう、ご協力お願い致します。』

『大自然の中にある露天風呂です。虫さんも葉っぱさんもこの温泉が大好きです。時折ご一緒しているようですので、仲良くしてあげてください。尚、ハチさんとアブさんには十分お気をつけ下さい。』

まだ早春で虫さんたちと遭遇することはありませんでしたが、こんな文章からも豊かな自然に抱かれた癒し系の時の流れが演出されます。

黒川温泉の「豊かさ」を象徴するのはその自然だけではありません。なによりも、源泉の豊かさであろうと思います。僕たちは一泊しただけでしたが、宿の「樹やしき」では、全ての風呂が源泉掛け流しでした。そして、風呂ごとに源泉が異なるため、風呂ごとに湯質が違っているのです。部屋風呂、家族風呂、大浴場、さらには離れと食事処をつなぐ道筋にも温泉が湧いています。

竹筒からチョロチョロと流れ出る温泉は飲用可能とのことで、横に柄杓がそえられています。硫黄の匂いや、酸味など、明らかな違いがあって、お湯の違いを楽しむことができます。

渓流沿いに立ち並ぶ黒川温泉街では、それぞれの温泉宿で源泉が異なっているので、湯巡りをすると、それぞれの宿の風呂の違いだけでなく、湯質の違いも楽しめるとのことでした。樹やしきから温泉街までは車で送迎していただけます。

僕たちは残念ながら、湯めぐりする時間的余裕がなかったので、ぶらぶらとそぞろ歩きだけして温泉街を楽しみました。道はきれいに舗装されています。玉砂利なんかが埋め込まれたりして温泉街らしさが演出されています。道幅はとてもこじんまりとしています。宿泊者の車が一台通るために、歩行者が店の軒先に入ってよけねばならないほどです。

その狭い道幅と風情のある和風の建物群、硫黄の匂いが「温泉街」の雰囲気を醸し出します。

そして、静かななかに微かに聞こえる渓流のせせらぎ、道行く人のざわめき、軒から顔を出していた家猫。

それらは他の場所でも経験できるもののはずです。なのに、ここでは温泉街らしい雰囲気演出に一役買っているように感じるから不思議です。

土産物屋では、今や日本を代表するゆるキャラとなったクマモンが強烈なインパクトを放っていましたが、クマモン以外の黒川温泉郷ならではのお土産も頑張っていました。思わず応援しちゃったりして。

また、ソフトクリーム、白玉、どら焼きなど、スイーツのお店が何軒もあって、とても美味しそうです。湯巡りをしながら火照った体を冷たいアイスで、、、なんて良いですねぇ。僕たちはどら焼きを買って宿で楽しむことにしました。

頭をぶつけてしまいそうなほど入り口の小さな酒屋がありました。除いてみると、なかは広々とした土間となっていて、そこに、地酒が所狭しと並んでいます。お店の方に話をうかがうと、やはり地元の焼酎がオススメだとのこと。

僕は酒に強いほうではないので、蒸留酒はやや苦手なのですが、折角なので、オススメの焼酎を買うことにしました。試飲もさせていただけるといいます。いくつかためさせていただいて、結局、香りがマイルドな米焼酎を一本選びました。

ふと横を見ると、三年ぶりに出荷されたという「幻の」梅酒が売られています。これはこれでいかにも美味しそうです。結局そちらも「妻用に」ということで購入してしまいました。

そんな風にぶらぶらしてお店を覗いたり、写真をとったりしているうちに、だんだん暗くなってきたので宿にもどりました。

宿に戻ると、レセプション近くのラウンジがまた良い雰囲気を醸し出しています。

樹のぬくもりたっぷり、ログハウス調のバーカウンターにすわると、目の前の大窓の向こうには、ライトアップされた一面の木立が広がります。春の萌えいずる柔らかな緑が暗闇に浮かび上がっています。静かな夜を、ここでゆっくりと過ごすのも良いと思われます。

僕たちは子どもたちがいるので行きませんでしたが。

かわりに、というわけではありませんが、僕たちは、露天風呂や、別棟での夕食をゆっくりと楽しみました。

この辺りは、春だというのに夜になると、外はかなり寒くなります。寒い外気のなか、暖かい露天風呂に首までつかり、ゆったりと楽しみました。部屋には温泉を使った暖房があり、これのおかげで暖かく夜をすごすことができました。

翌朝はあちこちで鳴くウグイスの声が目覚ましです。かなり早朝から目が覚めました。

名残を惜しんで最後にもう一度露天風呂を楽しもうと、外を見てみました。

なんと!!

雪が積もっているではありませんか。うっすらと、一センチほどではありますが。

露天風呂で、湯煙の向こうに見える、うっすらと雪化粧した新緑の風景は冬とも春ともつかないこの季節ならではの風情です。

渡り廊下の横の桜の花も、綿のような雪の帽子をかぶっていました。

朝食をいただきながら、宿のかたに話をうかがうと、こちらでは時々あるとのこと。やはり標高700mという山間だからなのでしょう。

間もなく雪は上がり、空も明るくなってきました。少しずつ晴れ間ものぞくようになってきたころ、僕たちは宿を後にしました。

そして熊本駅でレンタカーを返却し、九州新幹線に乗り、博多から飛行機に乗って、その日の夜には東京まで帰ってきたのでした。

そんなに前のことではないのに、今はもう夢のようです。つくづく思うに、時間の長さは一定ではありません。

時間の長さは一定ではないことを証明したのはアインシュタインでした。でも、日常生活における時間可塑性を証明するために相対性理論は必要ありません。

黒川温泉はそれを実感させてくれました。

それは、ゆったりとした時間ほどあっという間に過ぎてしまうという、残念な証明なのですが。

いつかまた、もう一度、もっとゆっくりと、あの時間を愉しむために黒川温泉を再訪したいと思います。

あの街の時間はその時まで、今のままでいてくれそうな気がするので。

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