回復曲線と病み上がり
以下は日常診療と自分の経験から解釈をしたものです。こんな考え方をすると、いわゆる「病み上がり」というのを良く説明できるんじゃないかと思っています。実際便利な考え方だと思っています日、患者さんにも、こういう考え方で接しています。
ただ、不勉強のためか、医学書に書いてあるのを見たことがありません。間違いなどがありましたら、正しい知識をお持ちの方にご指摘いただければと思います。また、文献などございましたましたら、お教えいただければ幸いです。
いわゆる「病み上がり」という病態一般についてです。
「病み上がり」とは、一般に病気が治ったばかりで、体力がまだ十分に回復していない状態をさすと言われます。医学的に言えば「回復期(convalescence)」に近い考え方で良いのだと思います。
この状態は、ホメオスタシスの観点からグラフで説明ができると思っています。
体調のグラフを次の図のように定義します。x軸は時間経過。y軸のプラスが大きければ大きい程「健康」。マイナスが大きければ大きい程「病気」とします。
今、普通の健康状態を
y=2
で表せるとしましょう。でも、健康の時だって調子のいい時と悪い時があります。普通は恐らく、次図の曲線のように表されるはずです。
同様に、病気の時はこんなふうに表されます。
と、すれば、病気が良くなる時も次図のように良くなるわけがないと思われます。
多くの場合、三歩進んで二歩下がる、ではないけれど、次図のような経過をたどるのでしょう。
でも、そのようなことは意識されず、頭の中では前に出てきた図のように右肩上がりによくなると思ってしまいます。すると次図のようなことがおこります。
この図の x=2 近傍の状況が問題です。体調は赤線のごとく、いったん快方にむかった後、下降線をたどっています。けれども、頭の中では青線のように回復するものだと勘違いしています。
一般に、もともと体力のある人ほど、せっかちな人ほどこの回復期にじっとしていることができない印象があります。
スポーツ選手のリハビリが難しいのもこれと同様の経過なのだと思います。
体がぐうぅっと良くなって来た時、そのままの調子で良くなっていくと勘違いしてしまう。早く以前と同じ行動パターンに戻りたくてしょうがない。体調の改善は停滞していたり、むしろ下り気味であったりするのに。で、ムリをしてしまう。頭の中では「この位大丈夫だろう。」と思っていても、実際には想像以上の負荷がかかっていて、また、以前の具合の悪い自分に逆戻り。
「病み上がり」を大切にしなくてはいけない、大きな理由の一つが、この「体調の誤解」だと思います。
ただ、僕は、もう一つ理由があると思っています。
それは僕たちが、「元気であること」のモノサシを持っていないことです。
「病気であること」のモノサシはたくさん持っています。熱が高い、咳がひどい、喉が痛い、、、、症状だけでなく、数々の血液検査項目も全部、みんなそうです。ほぼすべてに「正常」とか「基準値」が設定されていて、そこから離れているほど「ひどい」ということになります。
でも、数字が大きければ大きいほど元気だっていう検査はないのです。「今、どの位健康なのか?」を診察や検査で数値化したり評価したりするのは時として難しいものです。
「10以上の数値だったら普通の生活に戻っていいですよ。」なんていう検査があれば楽なのですが、、、。
だから「病み上がり」の時に「元気」であることを判断するのは慎重になることが大切なのです。
普段外来診療で、かくのごとくエラそうに講釈をたれている私でございますが、ここで白状いたします。
先日、急性胃腸炎らしい症状に見舞われまして、嘔気、嘔吐に悩まされました。
幸いにして一日で回復したのですが、その翌日、店から漂う香りに抗しきれず、とんこつラーメンを食べてしまいました。気がつけばいつもと同じトッピング付きで。
その後のお腹がつらかったこと、つらかったこと、、、。
それはそれは 「とほほ、、、」 な状態でございました。
のたうち回りながら、これは懺悔の文章を書かねばならぬと、つくづく反省したのでした。お恥ずかしい限りです。
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