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6.患者さんの死から学ぶ 4

65歳のKさんは、北海道で漁師をしておられた。成功した子供さんに呼ばれて千葉市で生活していた。家族の強い希望で病名は伏せられていた。子供さんにすべてをまかせ、自分から病状を聞くこともない控え目な老人であった。休日にはよく子供さんたちが集まり、時には外泊して温泉にも行っていた。いよいよ重症となった時のことであった。私が病室を訪れている時に、子供さんの一人が「もうすぐ良くなるから頑張ってね」と声をかけた。するとKさんは「もう駄目だよ、こんなになって生き返った人を見たことがない」と答えた。冷静に過去の経験から自分を見つめ、死の到来を悟っていたのであろう。死を自然現象ととらえ、その自然の流れのなかにいる自分を主張しているようであった。厳かな空気が漂っていると感じた。

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