学会前、男一人飯
先週、学会前日の話。金沢駅近くのビジネスホテルに宿泊した。疲れていたけれど、食事をしていなかったので一人でぶらっと外にでた。
そこから歩いて百メートル程だろうか、角を曲がると何軒か、ラーメン屋、居酒屋などが軒を連ねる路地があった。
そのなかで一番活気のありそうなお店をのぞいてみた。
二階席もあるようだが、どうも宴会用らしい。一階は一列のカウンター席のみ。たまたま一席だけ空いていたので座らせてもらった。
人気店なのか、小一時間の間、数名のお客さんが入店できずに帰って行った。なかには常連さんらしき人もいた。板前さんが、もうしわけなさそうな顔をして手を合わせてお辞儀していた。
板前さんは二人。若女将と、若い男の子が二人ほどでサービスをしている。一人が大将と呼ばれていたので、あの人が板長さんか。
カウンターの上には大皿料理。ちょっとおばんざいみたいな感じ。
ブリ大根、鶏つくね、魚のモツ煮、加賀野菜の五郎島金時(サツマイモ)の天ぷらなどがのっている。
上の黒板にはその日のお勧め。
できるだけ関東では見たことのない料理を食べてみたいと思った。
最初に書いてあるのが「ガンド」。
いきなりわからない。
聞いてみると、ブリの小さいものらしい。関東ではワラサとよぶもののようだ。
これを含めて刺身の盛り合わせをお願いした。氷が敷きつめられた小ぶりの木桶に主役のガンドとイワシが鎮座する。これにタイ、タコ、マグロが一切れずつ盛られていた。
まず、ガンド。脂がのっている。でもギトギトではなく、歯ごたえもしっかりしている。香りは確かにブリのそれ。イキナリ美味。イワシは口の中でとろけるような柔らかさ。それぞれが味と香りを主張する。タコはコリコリとした舌触りと、じんわりしみ出す旨味がたまらない。定番のマグロもタイも、期待通りの存在感を示している。
サカナって美味しいねぇ。
そう言えば、「のどグロ」が旬だという噂を聞いていた。塩焼きをお願いしたら、売り切れだった。残念。
それではと、趣向を変えて、加賀野菜の天ぷらを頼んでみた。金時草、つる豆、サツマイモの天ぷらは、野菜の甘み、香りが衣に包み込まれ、何とも言えず美味だった。なかでもサツマイモのホクホクとした甘さが印象的だった。
続いて、白海老のかき揚げ、イワシのフライを注文した。空腹だったとはいえ、揚げ物が続いて、メニュー構成としてはちょっと失敗だったかもしれない。
でも、それぞれがまったく異なる香りを立ち上げるので、飽きることなく完食できた。
そして何より印象が強かったのが、食器と盛りつけが美しかったこと。
カウンターや棚に数多くの食器が積み重ねられている。それぞれ形が独特で、彩りが鮮やか。加賀百万石のイメージにちょうどよく重なる。
もっとも、僕の『加賀百万石のイメージ』なんて、この美味しさに比べたら、誠に貧困でしかないのだけれど。
心中、ひとりで苦笑していたら、ふと、思い出した。
『魯山人味道 (中公文庫) 』に、食器の大切さを説いたエッセイがあったことを。
多くの人たちと一緒に楽しむ会食もいいけれど、たまにはこうして静かに楽しむ食事も悪くない。そう思った一夜だった。
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