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コレステロール治療には常識と非常識があるそうで

コレステロール治療の常識と非常識 角川SSC新書 (SSC新書) 」を読みました。

著者の一人は僕が研修医時代にローテートした時、直接指導していただいた横手先生。

ある時、ふとっているという、ただそれだけで、心不全、呼吸不全となってしまった患者さんが入院してきました。

僕は病態をどう整理して良いのかわからず、手当り次第にカルテに情報を集めました。そして自分なりに、Subjective (主観的情報)、Objective (客観的情報)、 Accessment (評価、解釈)、Plan (検査治療計画)に分類し、アタマを整理していきました。

当時のカルテは、消す事ができないようボールペンでの手書きでした。その紙カルテに横手先生から、鉛筆書きでお褒めの言葉をいただきました。

「良く書けていると思います」

「後で消して下さい」と付け加えて。

あれは嬉しかったなぁ、、、。今だったらデジカメで記念撮影しているところです。すごく消したくなかったのを覚えています。いや、消した記憶がありません。消さなかったかもしれません。

その後、この患者さんは体重減少とともに全身状態の改善をみて、無事退院されました。そして、横手先生の手により症例報告となりました。僕も名前を入れていただいて大変光栄な事だと思っています。

さて、本書。

脂質代謝異常症とその意義、治療について、わかりやすく説明してくれます。相変わらずの話し上手です。内容は、引用文献リストこそないものの、論文をもとにした、いわゆるevidence basedなものです。

とても参考になりました。

それにしても、一般の人達にとって、「コレステロール治療の『常識』」ってなんでしょう?

「コレステロール」が血液検査項目に含まれる事は、多くの現代人にとって「常識」と言っていいと思います。

「コレステロール」「中性脂肪」といった言葉は多くのヒトが知っています。最近では「善玉コレステロール」「悪玉コレステロール」といった言葉も大分一般に拡がりました。

そして、「コレステロールが高すぎるのはよろしくない」、これもたぶん「常識」でしょう。

では「コレステロールは下げすぎない方がいい」、これは「常識」でしょうか、、、、。

「高すぎるコレステロールは下げた方がいい」という知見に、後から「下げすぎない方がいい」という知見が加わったのでしょうか。

世の中にはそれに近いイメージを持っている人もいるようです。2010年にそういうことを発表した学会があったそうです。マスコミなどで取り上げられたのでしょうか、「それ」を知っている人は意外に多いですね。僕も外来で何度か質問されたことがあります。

「コレステロール、ちょい高」や「ちょいデブ」がいいという話はなんとも耳に優しく響きます。

考えてみれば、「脂がのっている」という表現も旬を迎えていることを表します。元気いっぱい、活力がありそうに感じる表現です。その位のほうが健康でいいんじゃないか、、、。

また一方で、大病を煩っている方の多くは栄養状態が悪くなります。結果としてコレステロール値も低くなります。そのような方と比較をすれば、コレステロール高めの人の方が長生きです。間違いありません。

やっぱり「コレステロール、ちょい高」の方がよさそう、、、。

でも、これは比較の対象が違います。栄養状態が悪くてコレステロールが下がってしまうのと、コレステロールを下げるのとは別の話です。

本書では、この辺のところを指して「非常識」と言っているのだと思います。

多くの人が知っているということと、正しく理解されているか、ということは別です。

また、身近に感じられるものについての議論は、簡単である、という錯覚に陥りやすいものです。

何となく聞いた言葉が出てくる話題なので、簡単に話が出来そうに思いますが、そうではありません。普通に話をすると、まとまりのない事実や、飛躍した考察の羅列になってしまうことがよくあります。

コレステロールについての話も同様です。

本書はコレステロール治療について、現在知られている現在の知見を紹介し、高すぎるコレステロールを治療することの意味明らかにします。また同時に、一律的な治療をすることへの警鐘を鳴らしています。

リスクの低い人にまで治療をする必要はないと。

なるほどねぇ、、、、なんて思いながら読んでいましたが、しばらく前に新しい論文が発表されていたことを思い出しました。

Lancet. 2012 May 16. [Epub ahead of print]
The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials.

まだ紙媒体として発行はされていませんが、インターネット上で先行発表されています。

27の無作為試験のメタアナリシスです。

これによると、
「5年以内に命に関わるような血管の病気に罹患するリスクが10%より低いと目されるような人たちにおいても、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げるメリットがあり、現在のガイドラインを見直す必要がある」
と書いてあります。

リスクの低い人も「スタチン」を飲んで治療した方が良いとのこと。ガイドラインが見直されるかも、、、。

「治療を必要とする人」がかわってしまうかもしれません。

ちなみにリスクの高い人でLDL(悪玉)コレステロールを下げましょう、という話は、同じLancet誌に2005年に発表されています。

Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1267-78. Epub 2005 Sep 27.
Efficacy and safety of cholesterol-lowering treatment: prospective meta-analysis of data from 90,056 participants in 14 randomised trials of statins.

こう言った情報の一つ一つをどのように解釈し、どう位置づけ、治療に反映させていくか。やはり、これには豊富な専門的知識と高度な論理性が必要です。

その点で、この本は、「現在のコレステロール治療」について、知識を整理するのに良いと思います。

もしかしたら、患者さんにはちょっと退屈かも知れません。でも、少なくとも医学生、研修医の先生方にはとても参考になるのではないかと思いました。

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