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「人が死なない防災」を読んで、まず「死なない」ことが防災の最初なのだと改めて思いました。

人が死なない防災 (集英社新書) を読みました。

東日本大震災の津波被害において、釜石市の小中学生の生存率は99.8%でした。俗には『釜石の奇跡』とも呼ばれ、防災教育の成果であったとされています。

釜石市の危機管理アドバイザーという立場でこの防災教育に携わったのが、著者の片田敏孝先生です。

片田先生は群馬大学の広域首都圏防災研究センターのセンター長で、釜石市の防災教育も研究成果としてHPに紹介されています

本書を読んでいて、48ページの図2は、僕にとって衝撃的でした。

釜石市の津波ハザードマップと、東日本大震災での津波到達範囲、そして死者、行方不明者の分布が重ねて示してあります。

ほとんどの方が、津波ハザードマップの浸水想定区域の外側で亡くなっています。

筆者は言います。

「ハザードマップは、何のために配ったのでしょうか。浸水想定区域のラインの外に住む人たちを死なせるためでしょうか。そう言いたくなるような状況が、ここにあると思いませんか。」

「奇跡」がおこったはずの釜石市でもこんなことが起こっていました。

筆者の主張は明白です。

「まずは生き延びることに全力を尽くしましょう。」

これを、2011年3月11日よりはるかに前の2004年から言い続けてきました。

本書は四つの講演を文字に起こしてまとめ直したものだそうですが、実際、四つの講演のうち三つは3.11以前のものです。

震災前、かつての防災講演会では地元の方から、こう言われたそうです。

「先生、群馬の山の中から出てきて『津波がこわい、津波がこわい』って、もういいかげんやめてくれんか」

「せっかくこんな湾口防波堤ができて、我々もやっとこれで心穏やかに暮らせると思ったのに、先生がきて『津波がこわい、津波がこわい』と話をする。まあええかげん、そんな話をするのはやめてくれんかいな。」

「世界一のものをつくってもらっているのに、それでもまだ心配しながらこの地に住んでいかなきゃならんのか?」

この言葉にひそむ意識の危険性は今なら容易に認識できます。でも当時、リアリティをもって実感することは、不可能に近かったのでしょう。

想定にとらわれすぎることの危険。とらわれすぎてはいけない。

これを言うのは簡単ですが、どうやって実現するのか、実現のために妨げになっているものは何なのかを実感するのは簡単ではありません。

たとえば、「津波てんこでんこ」。

これは「津波のときは、各自が自分の命に責任をもって、てんでばらばらで逃げろ」という言葉だそうで、東北地方に言い伝えられてきたそうです。

おっしゃるとおり。

頭で理解するのは簡単です。でも、筆者は簡単に実現できるとは考えません。

実現には何が必要なのか。

筆者は「信頼」だと言います。

大人も子供も、各自が自分の命に責任を持って逃げおおせる。このことについて、家族が信頼しあえて初めて、親も子供も各自で一生懸命逃げられるというのです。

実際、釜石市の小中学生のお母さんとのインタビューで、こういう会話があったそうです。

「お母さん、逃げました?」
「ええ、逃げましたよ。子どもは学校にいましたからね。ウチの子は、絶対逃げますもの。逃げるなって言ったって逃げますよ。」

そうですよね。そう思わなかったら逃げられませんよね。

我が家ではそこまでの信頼関係はまだ、、、。そんなに簡単なことではありませんが、そういう信頼関係を構築するために日々努力していくことが大切だと思いました。

その他にも、「人はなぜ逃げないのか?」といった問いに対し、丁寧に掘り下げ解決策を提示します。

3.11で小中学生5名を失ったとはいえ、3000人近い子どもたちの命を救った防災教育がどのようになされてきたのか。子どもたちは実際に、どう逃げたのか。後付けの説明でない、実録がここに記されていると思います。

やはり、まず「死なない」ことが防災の最初なのだと改めて思いました。

帰宅困難者とか、被害者支援の話も大切ですが、これは生き延びたあと考えるべき話ですね。分けて考えねばなりません。とても参考になりました。

同時に、この危機管理についての考え方は、ほかの分野にも共通するものがあると思いました。

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