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「二重らせん」を読みました。

二重らせん (講談社文庫)」を読みました。

ワトソン・クリックのDNA二重らせん構造モデルで有名な、ジム・ワトソンによる、DNAの秘密発見の物語です。科学者の書いたドキュメンタリーとしては古典的名著です。

筆者のジェームズ・ワトソン博士は存命中ですが、共同発見者のフランシス・クリック博士は2004年に他界されました。彼は、本書の中で、しゃべりまくる人として、その個性あるキャラクターが紹介されています。

クリック博士が亡くなった時、クリック夫人が(確かニューヨークなタイムス紙に) 

「フランシスはいつも新しい発見があったと興奮して家に帰ってしゃべりまくり、数日後に誤りだったことが露呈するのだけれど、あの時ばかりは本当だった。」

と思い出話を語っていたのをリアルに納得しながら本書を読みました。

そんな微かなリアリティを感じながら本書を読んで、改めて思ったことは、わからないことを「わかるようにする」というのはこれほど大変なことなのかと言うことです。

彼らはDNAの二重らせん構造を1961年に発見、論文公表して1962年にノーベル賞を受賞しました。

なんと発表の翌年です。
 
この発見は生物学における20世紀最大の発見とされますが、世界中がどれほどその発見を待ち望んでいたのかがわかろうというものです。  

DNAは、あれほど単純な構造なのに世界中の誰もそれを知りませんでした。

ライバルは世界を代表する化学者ライナス・ポーリング。(僕も学生時代にポーリングの書いた教科書で勉強しました。いや、させられました、、、。)

しかし、そのポーリングですら、その前年に三重らせんの誤った構造を発表しています。 

答えを知っているからだけれども、今から読んでみると、その単純な正解に行き着くまでの過程が大変まどろっこしく感じられます。

ワトソン博士と言う人は、その後、テロメラーゼの存在も予言していますし、本書の中でもDNAの構造や複製機構がわかるまえに、『DNA→RNA→タンパク質』と書いた紙を机の前の壁にテープで貼ったと書いてあります。それだけの先見の明というか、センスがあるというのに、なかなか正解に達しません。

DNAを構成する基本分子である、アデニン、グアニン、シトシン、チミンといった塩基の化学構造はわかっている。

DNAに含まれるアデニンとチミン、グアニンとシトシンの量が等しいこともわかっている。

あとはその立体構造を決めるだけでした。そこまでわかっていれば、そんなの簡単なことのように思えるけれど、全くそうではなかったようです。話は右往左往します。

共同研究者と意見が合わなかったり、提出したモデルが間違っていて、気まずくなったりもします。  

データの扱いなどについて、研究の倫理的側面から微妙な問題も描かれていますが、それがなければ、発見はもっと遅れていたことでしょう。

確かに、わかっていないことも沢山あったようです。

当時はDNAが遺伝情報をの本体であると言うことについてすら、疑問がもたれていたということです。DNAを構成する化合物の数に比べ、蛋白質の数はとても多いので遺伝の多様性を説明するには有利という議論には説得力がありそうです。

細胞が分裂するとき、いかにして遺伝情報が保持され、伝達されるのか、ということについても、当然、全くわかっていません。
 
ワトソンとクリックは、DNAの基本構造を解明することで、「タンパク質とDNAのどちらが遺伝子の本質なのか」、「細胞分裂の際に遺伝情報がいかにして保持されるのか」という二つの大問題まで、同時に答えてしまいました。

「未来を予言する最も確実な方法はそれを発明してしまうことだ」という有名な言葉があります。工学の世界ではその通りだと思います。でも自然科学の世界でそうはいきません。
 
彼らが導きだした答えは人の想像を超えて単純で美しいものでした。そして、この発見なくして今の生物学も医学もあり得ませんでした。

 
 
 


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著者:ジェームス・D・ワトソン

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