手作りの国際学会 2
前回の続きです。
翌朝、学会事務局に相談に行きました。
副会長の小柄なVB教授がにこやかに応対してくれました。
彼女は全く動じません。
Do you want to present your data?
ここで「Yes」と答えないでは、何のためにはるばるイタリアまで来たのかわかりません。しかし、この「Yes」がつらい結果を引き起こしました。
We can find your place on the program, so, stay around here.
発表に穴があいたときに、滑り込ませてくれるというのです。でも、どこに穴があくかは彼女も知りません。
いつ呼ばれるかもわからないまま、軟禁状態です。通りすがりに、にっこり笑ってウインクとかしてくれちゃって。善意からやってくれてる事だし、怒るわけにも行かず、アルカイックスマイルで微笑み返す僕、、、。
実際、一度は、「演者がいなくて穴があいた」ということで次演者席までつれていかれました。でも直前に本当の演者が現れて僕はキャンセル。
その位であきらめてくれれば良いのに、蛇の生殺し状態は続きます。
もうイイから、準備してきたポスターを何処かに貼らせてもらい、それでよしとして自由にしてもらいたい、、、。
そう申し出たら、
「よし、ポスターは開いているところに貼ることにしよう。」
と言ってくれました。ポスターを貼り終え、ようやくほっとしました。そしたら副会長、またウィンクしてくれて、プログラムを指差し、
But still, we will find your place for you....
なんて好意的な事か、、、。
あーあ、イタリアで何やってんだろ。オレ。とか思いながらネットで憂さ晴らししながら、コンピュータでたまっている別の仕事をして時間がすぎて行ったのでした。
そして帰国の前日の午前中。僕はネクタイもせず学会に出席し、気分的には半分ふてくされていました。
これから座長をやる日本人のHS先生と話していました。
HS先生いわく、
「一緒に座長をやる先生が、風邪引いたとか言ってこないんだよ。演題もキャンセル。事務局からは一言もないんで、どうも自分一人で座長をやらなきゃいけない。自分の発表も、自分で司会しないといけないんだ。『招待口演だ。』って言われてるけど、『旅費は出せないから自分で工面してね。』って言われた。かわいそうなオレ、、、。」との話でした。
(という事は発表が一枠空くという事か、、、。)
そこで、発表内容はそのセッションとはちょっとずれているけど、そこで口頭発表させてもらえないかと、その先生にお願いしました。HS先生は快くOKしてくださいました。
「座長のOKをとったけどいい?」
VB教授のところに行って話をしたところ、「ほら大丈夫だといっただろ?」てな顔で、
Of course. I am happy with that.
自慢げに僕を見つめてうなずいています。
発表する場所を見つけたのはオレだ、、、、。
まぁ、そんなわけでなんとか口頭発表させていただきました。(正直、発表そのものは準備不足で、自分の英語力のなさを改めて痛感させられるものでしたが、、、)
発表後、副会長先生が寄ってきて、
Sorry, I could see only the last half of your presentation. But it was very interesting.
と言ってくれました。お世辞でもとっても有り難かったです。やっぱイイ人だねBV教授。
折角イタリアまできて、観光もあまりできなかったけど、「まぁ、なんとかやるべきことはやった。」とちょっとだけ自己満足にひたって、僕は帰国の途についたのでした。
興味深いのは、この過程で誰一人として、責任論的な議論をしなかったことです。その辺にこの学会のオットリさ加減が現れているように思います。
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