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父親からもらった言葉「時に癒し、しばしば支え、つねに慰む」

この言葉は、アメリカ、ニューヨーク州北部にあったトルドー結核療養所のエドワード・リビングストン・トルドー像の台座に刻まれていた言葉だそうです。

時に癒し        Guérir quelquefois
しばしば支え    Soulager souvent
つねに慰む    Consoler toujours

原語はフランス語だそうで、発音等、僕にはさっぱりわからないのですが、実は、この言葉の出所もまた、わからないようです。

フランスの高名な外科医アンブロワーズ・パレの言葉であるという説もあるそうです。

この言葉は研修医の頃、父親から教えてもらいました。上記のような知識はその後、砂原茂一著「医者と患者と病院と」で仕入れました。

言葉の出自が明らかでないことをいいことに、僕の中では、父親からもらった言葉にさせてもらっています。

神様のカルテ (小学館文庫) 」を、この言葉を思い出しつつ読み終えました。

主人公、栗原一止の言葉や経験は本当にそれを実感させるものです。一止はそれが好きなのだと思います。そして、その思いは、多くの臨床家も共有できるものではないでしょうか。

こんな言葉たちが出てきます。

『「良い医者」 にはなりたい。だが何をもって「良い医者」とするのか。』

『悲しむのは苦手だ。』

『私は医者である。治療だけが医者の仕事ではない。』

『「癌はだいぶ大きいですか?」不意討ちである。わずかに戸惑った私の目を、安曇さんの穏やかな目が見返した。』

物語の中では、これらの言葉、エピソードたちが染みこむように流れていきます。 読後感もとてもさわやかで、ポジティブな気持ちになれたので、また読んでもいいかな、と思いました。

何年かして読み返したら、また違った感想を持てるかもしれません。

一般論として、僕はノンフィクションを好む傾向にありますが、たまに読むフィクションも刺激になっていいですね。

個人的にはキャラクターの個性が際立っているものが好きです。この点、本書に登場する人物も、主人公、栗原一止を初めとしてみな個性的です。

作者は一止のように夏目漱石を敬愛し、草枕を暗唱する程読み込んでいるのではないかと思わせる文体と人物描写です。男爵、学士殿、古狸、大狸、海先生、山先生、、、なんてあだ名の付け方もまるで「坊ちゃん」のようです。

そんなキャラに囲まれ、業務に忙殺されながらドラマは着実に進行して行きます。

僕がフィクションを好きになるときののポイントはもう一つあります。それは小物。

一止の部屋にあるハリソン内科学、戸田新細菌学、ネッター解剖学なんて教科書は、ちょっとした事ですが、リアリティをましてくれます。しかも、酒の隠しどころとして使っているあたりの使い方が心憎いですね。

この他、この物語では、コーヒーと酒が効果的に使われます。

コーヒーではやった事ないのですが、読み込んで、 登場人物の心持ちを想像しながら同じ酒を飲むと、「小説の味」がして二度楽しめます。

「呉春」、「飛露喜」、「白馬錦」、 「五一わいん」、「夜明け前」、「佐久の花」といった、作品に登場する銘酒を並べて、小説を肴に飲み比べ、、、。

なんて、まぁ、酒は強くもないですし、そんな贅沢は夢のまた夢ですが、、、。

大切な言葉に始まって、酒の話になってしまいました。この小説もその辺の感覚が不可分なまま、自然体で語られているところにも共感できる理由があるように思いました。

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