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コード・ホワイト

コード・ブルーという言葉はテレビドラマで大分有名になった感がありますが、最近、コード・ホワイトってのも必要なんだなぁ、、、と感じる事がありました。

(個別の例を標的とする事は目的でないので、話のディテールを調整し、できるだけ固有名詞が特定できないようにしてあります。)

某病院、ある日の診察室

「ストレスで胃腸がめちゃくちゃになってしまったので、(他の病院で処方されている)、この薬を処方して欲しい」と壮年の男性が内科を受診してきました。

過去のカルテを見てみると、これまで、不定期でこの病院を受診していますが、その症状で受診した事はありません。しかも今回と似たような受診のしかたが多く、カルテには「かかりつけのドクターに診ていただくように」とか「本来このような受診のしかたは望ましくない」などの記載が複数あり、かなり自己中心的な言動や要求が目立つ方のようでした。

「これは要注意、、、。」

でも、症状があって患者さんがここにいるのですから、診療を拒否することは出来ません。一方で、医師として自分の責任で処方する以上、なにも考える事なく「注文通り」というわけにもいきません。

これまでに、いつ頃から、どのような症状があって、どこの病院でどういう薬がどのくらいの量処方されているのかを細かく伺う事にしました。すると、、、、。

「おまえはそうやって個人情報を引き出して、そこの病院に連絡をしてあらぬ事を言って大騒ぎをするのだろう。俺はそれで随分迷惑したんだ。もう、おまえは良い。上の医者を出せ。」

と立ち上がり興奮して大声を上げます。

そうではなくて、その薬の必要性について判断するための周辺情報としてなるべく多くの事を知りたいのだと説明し、まずは納得して頂きました。

診察の結果、患者さんの要求する一部の薬は必要なさそうに思いました。何も言われなければ僕は処方しないでしょう。しかし彼はそれを要求します。

しかも、患者さんは「念のため」保険で認められる量の倍量を処方して欲しいと主張します。「俺が責任を持つ。あんたには文句は言わないよ。俺がそう言ってんだからいいだろう。金なら払うから。」と。

薬に関しては「診療上、保険で認められていないと言う事は、単にルールというだけでなく、薬物の副作用などを含め、健康に有害である可能性があるために処方量が定められているのであって、金の問題ではないのだ。ルールを守る事はあなたの体を守る事にもつながるのだ」と説明し、最小限の処方内容で納得して頂きました。

それでもそこで終わりません。次には自分の自覚症状に関し、「癌かもしれない」「寄生虫かもしれない」と言って色々な検査を要求します。

検査は結果がわからないから検査するものです。「その検査をやっても絶対正常なんですね?」と念を押されれば、「絶対正常とは言い切れません」と返事するしかありません。

それでも、「こういう理由でその病気は可能性が低いと思うので、検査の優先順位としてはかなり低いと思いますよ」というような説明をし、いくつかは納得して頂きました。全部やらないというわけにもいかず、とりあえずCT検査は行う事としました。

さらには立ち上がって僕がカルテを書く横に仁王立ちです。そして、カルテの記載内容を確かめながら、「ここはこう書け」と全て指示します。彼の言動は徐々にエスカレートします。

「カルテを開示して欲しい。」

全てをコピーし、今度は7年前の(今は勤務していない別の医師による、しかもコメントの最後にクエスチョンマークつきの)カルテ記載に激高し、「訴えてやる!!」と大騒ぎ。

そのほかにも検査や会計などの部署で威嚇的言動が多々あったため、最終的には警察に通報する事になりました。

通報されたとわかると、その人は大急ぎで会計をすませ、そそくさと帰っていきました。しかも、2週間後に僕の外来の再診(CTの結果説明)の予約はとった上での帰宅です、、、。

過去の診療における彼の言動を記憶している職員の話では以前に比べてエスカレートしているとの事。今回は大した事なくてよかったですが、2週間後はどうなる事か、、、。暴力沙汰にでもなりはしないかと、スタッフは今から不安な様子です。

そのあと警察が到着し、警察の事情聴取、、、。

警察の方には「危険を感じるようならいつでも呼んでください。」と言っていただき、スタッフは少し安心したようです。

最近 病院では職員への患者家族からの暴力行為があった場合に「コード・ホワイト」というコードを用意している所が増えているようです。コード・ブルーは患者急変ですが、コード・ホワイトは職員の安全に危険が及んだ場合です。どちらも全職員がバックアップして応援し、困難な状況を乗り切ろう、というものです。

備忘録がてらに紹介すると、僕が現在勤めている施設では下記のごとくです。

まず、職員への暴力行為は次のレベルに分類されます。

• レベル1:暴言、脅迫
• レベル2:器物損壊、暴行
• レベル3:医療処置を要する負傷
• レベル4:生死に関わる重大な負傷

レベル1、2では現場にいる者、近くにいる職員で対応、説得に当たりますが、やめない場合はレベル3、4の場合の措置に移行します。レベル3、4ではコード・ホワイトを交換に連絡すると全館放送が入ります。それを聞いた職員は、部署を問わず現場に急行し、支援をすることとなります。

この時点で警察への連絡となりますが、連絡は原則として一定の職種の者が行います。急を要する場合は現場から直接通報する事もいとわない事となっています。

近年は医療事故などで病院が叩かれる事も多くなりましたが、医療者も自己防衛を考えねばならない時代になったのかと、ちょっと残念な気持ちです。人を相手とする仕事を生業とするなら当たり前、と言われてしまうかもしれません。

でも、、、感情的には割り切れません。

「昔は良かった」的なため息が出てきます。

時代がかわって、医療が進歩して、、、そこで働く人たちの労働環境は、、、。診療以外の仕事量と重圧は増えたような気がします。

昔と比較して良くなったのは何でしょうか。

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