南北問題としての結核
素人的医系小論文シリーズ テーマ12 感染症の現在
今回のお題は、課題12a 「南北問題としての結核」です。
一般に南北問題というのは先進国と発展途上国の間の経済格差に起因する種々の問題を指します。この課題ではその医療的側面の一つとして結核が取り上げられています。
かつて日本においても結核は命にかかわる深刻な病でした。堀辰雄の「風立ちぬ」など、それを題材にした小説もありました。僕の父も結核のため療養所生活をすることとなり、大学入学が2年程おくれたという話を聞いています。日本で結核が猛威を振るっていたのが、そう遠い昔ではなかった事がわかります。
日本でも結核の脅威がなくなったわけではありませんが、開発途上国においては過去の日本と同様の状況が現在においても続いています。
疾患の予防のためには、疾患そのものを社会から減らす努力が必要です。栄養状態の悪い人は結核などの感染症にかかりやすいと言え、庶民の衛生環境と健康増進は感染症蔓延予防の一助となります。また、その地域での疾患の流行状況などの情報から、人の集まる場所をさけるなどといった行動により、感染の機会を減らすことができます。
次に、感染者を早期に発見し疾患の蔓延を防ぐ事が求められます。このためには、症状がなくても、健康診断を定期的に受診したり、長くつづく微熱や咳嗽といった症状がある場合、自ら結核を疑って検査を受けるよう、啓蒙することも重要です。当然、受診のための経済的障壁も低くする必要があります。
最後に、感染者の治療によって重症化を防ぎ治癒に導く事が必要です。結核は治療に長い時間がかかります。治癒までの間、継続的に診療を受け続け、薬の内服を続けなくてはなりません。そのためには、治療の必要性を十分理解することと、薬を購入し続けられるだけの経済的裏付け、そして薬の安定供給が必要となります。
以上のように、開発途上国における結核予防を推進するためには、その全ての段階において、積極的な啓蒙活動を含む教育、経済的裏付けが必須である事がわかります。実効性の低い要素が複数あるとそれぞれが相乗的に作用して成果を激減させてしまいます。
これを南北問題としてとらえた時、結核は古い感染症であるからこそ、先進国は過去の経験から、開発途上国に対し、低予算で具体的な方策を示せるのではないかと思います。それを長期にわたって地道に継続すること、そして着実な成果を示していくことが、問題解決のために先進国がなすべきことだと考えます。
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