空気の研究
「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3)) を読みました。
今ではもうKYなんて言わなくなりましたが、いわゆる「空気」を主題に取り上げた古典的著作です。
これまで色々なところで、話題になっているのを見ましたが、よく読ませていただくShinさんのブログで紹介されていたのと、たまたま本屋さんで見かけたので、これも何かの縁と、読んでみることにしました。
山本七平氏の著作は2冊目ですが、彼の文体をちょっと読みにくいと思ってしまうのは僕だけなのでしょうか、、、。
全体の印象として、帰納法的議論が進められるため、具体例が多くでてきます。そこで示されるものは本が出版された当時の時事的な内容であったり、第二次大戦における海軍の話であったりします。ものによっては背景のよくわからないものも、、、。
でも、書いてある事は今も昔も変わらない、日本的な「空気」の話です。相当程度納得のできるものです。
間違いだとわかっていても、その場の「空気」に支配され、流れを止めることができずに突き進んでしまう事はよくあります。無理がとおれば道理がひっこむ、というヤツです。
最近あまり取り上げられないように思いますが、いじめ問題も「空気」に起因するものだと思います。同様の空気は大人の間でも生じることがあります。
ちょっと違ったところでは、狂牛病、新型インフルエンザの騒動も空気によって支配された部分があったと思います。論理的な議論をしているように見えるが、冷静になってみると破綻しているような、パニックであることを自覚しない集団パニックがそこにあったように思います。
政治の世界においても、頻繁に見られます。選挙のときに吹く「風」というのが象徴的です。最近は「風」がよく吹きますし、選挙する側も、マスコミも、「風」を吹かせようとしているように感じます。
そうして見ていくと、この空気の問題は「無理が通れば、、、」という域を越え、日本全国を覆っているようにすら感じます。
山本氏のエラい所は、その「空気」についての考察を深めるだけでなく、そこに「水をさす」事についても視野にいれ、考察している事だと思います。
それによって、本書は、「空気」によって支配された事例の批評に終わる事なく、包括的なバランスを持った「研究」に仕上がっているのだと思いました。
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「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))
著者:山本 七平 |
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» 「空気」の研究 山本七平 [発散⇔収束]
本書:裏表紙より
昭和期以前の人びとには「その場の空気に左右される」ことを「恥」と考える一面があった。しかし、現代の日本では"空気"は"絶対権威"のような驚くべき力をふるっている。あらゆる論理や主張を超えて、人びとを拘束するこの怪物の正体を解明し、日本人に独...... [続きを読む]
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