_

関連

無料ブログはココログ

« 危ないダイエット | トップページ | ポンペ »

医系小論文テーマ3-b 患者の知る権利と「告知」

医学系小論文事始 3b 患者の知る権利と「告知」

 とりあえず、課題文の中に自分の父親が出てきてびっくりしました。医学部を目指す人の参考書に取り上げられる文章の中に自分が出ているなんて事を、生きて聞くことができたら今頃、喜んでいたことでしょう。

 それから今、テキスト代わりに使っている医系小論文テーマ別課題文集21世紀の医療 改訂版 (駿台受験シリーズ) 課題文3bの文章中の「ガン」という表記も気になりました。正式には「ガン」は間違いです。さらに「がん」と「癌」を使い分けもあるのだと言うことは以前のエントリにもちょっと書きました。(「癌、がん、ガン」)

 医学系小論文を書く場合には、少し意識してもいい事だと思います。

 さて以下が本題となります。

 「がん」という病気が「不治の病」と同義に扱われてきたため、この病名を患者さん自身に知らせる事はなかなか世の中に広がることはありませんでした。これはヒポクラテスの誓いにもみられる医師のパターナリズムが大きく影響していたものと思われます。しかし、ヘルシンキ宣言、患者の権利章典に関する宣言などを通じ、インフォームド・コンセントという概念が広く定着し、患者主体の医療の必要性、正当性が認識されるようになりました。医師に求められる意識もパターナリズムからパートナーイズムへ主軸がおかれるようになり、がん告知も急速に浸透しました。

 結果として、がん告知は、医療の場における患者の主体性を尊重し、患者自身による治療法の選択を可能にするための情報提供として行われるものであると認識されています。病名を言い放って終わるものでは決してありません。

 そうであったとしても、一般には自分ががんに罹患した場合には真実を知らせて欲しいが、家族ががんに罹患した場合には知らせないで欲しいと願うかたが多いようです。このため、「告知マニュアル」によっては家族には知らせることなく、最初にご本人に話をするべきであると書いてあるものもあります。

 僕はこの意見には必ずしも与しません。病名はご本人に告げるべきだと思いますが、質の高いがん診療を実現するためにはご家族の協力が絶対不可欠だと思うからです。「マニュアル」がご家族を無視していいと書いてあるわけではないことは充分承知しているつもりですが、誤解を生む可能性があると思います。僕の考えでは、ご家族の意見をないがしろにすることは出来ません。

 現実的にがん診療は最終的に患者さんの癌死によって診療が終わることが多いのは事実です。だから告知が問題になるのです。この診療において最も大切なものは信頼だと僕は思います。

 がん告知には、検査結果とその解釈、診断名、病期診断、治療方針、治療に伴って予期される治療効果とリスク、予後など幅広いものが含まれます。治癒が望める場合には治癒率が大切な情報となるでしょう。治癒が望めない場合は生存率が大切な情報となることもあるでしょう。しかし、そういった数字や教科書に書いてあるような情報が最も重要なわけではないと思います。いずれの場合も信頼なくしてそこから先の診療は成立しません。

 信頼関係を構築するにあたり、基本に立ち戻って、互いにウソのないところから人間関係を再構築するのが、がん告知の手順であり、それこそがインフォームド・コンセントという概念の求めるところではないでしょうか。

 がん告知は「難しい疾患に罹患し、難しい状況におかれた患者さんの治療が少しでもうまくいくように、患者さん、ご家族、医療者が三位一体となって信頼関係を築き、頑張っていきましょう」という宣言に近いものになるべきだと思うのです。

 そしてその様なお話をして、告知に反対をされるご家族は僕の経験ではあまりおられません。とくに患者さんが若い場合には皆無に近いと思います。ですから僕にとって、最初に話をする相手が患者さんかご家族かは大きな問題ではないのです。

 同時に、病名を告知しない事が正当化される場合も確かにあると思います。代表的な例としては、患者さんが告知を希望されない場合です。希望しないこのような情報を、深い考察もなく突然、眼前にさらされることは大きなストレスに違いありません。

 僕はがんの確定診断がなされる前、検査の予約をする段階で殆どの患者さんに「もし、がんだったら告知をお望みですか?」と質問します。殆どの方は「イエス」と返事します。「ノー」とお答えの場合は告知されることのないよう、カルテに記載します。

 しかしこの場合も少なくとも、患者さんとご家族、医療者との間の信頼関係を構築せねばならない事は同様です。そしてこれは昔からなされてきた事そのものなのだと思います。そう考えれば、過去から現在にわたって医療そのものの本質に変わりはないことが理解されます。

 「告知」の問題は、患者さんの権利を尊重しながら信頼関係を築くための一つのプロセスとして考えるべきものであると思います。

医系小論文テーマ別課題文集21世紀の医療 改訂版 (駿台受験シリーズ) Book 医系小論文テーマ別課題文集21世紀の医療 改訂版 (駿台受験シリーズ)

販売元:駿台文庫
Amazon.co.jpで詳細を確認する

« 危ないダイエット | トップページ | ポンペ »

医系小論文」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 医系小論文テーマ3-b 患者の知る権利と「告知」:

« 危ないダイエット | トップページ | ポンペ »