円環を描いて
母から勧められ、「円環を描いてータンジョン・シリンデへの旅ー」を読みました。
この本は、亡き母の遺した一冊のノートや過去の写真をもとに、自らの出生の地を探し当てる物語です。
著者の米田氏は、第二次対戦前の昭和二年に 「馬来(マレー)半島ジョホール王国コタテンギタンジョンスラ巴盤河(パパン河)護謨園ゴム園」で誕生し、物心つく前に家族とともに帰国しました。
物語は「序 旅への誘い」に始まり、「(一)旅立ち」から「(六)翔ぶー円環を描いてー」の本文、そして「《あとがき》に替えて」と進みます。全体で三部構成となっており、中核をしめる「旅」を中心に据え、「旅の前」、「旅の後」も描かれています。
「序 旅への誘い」で紹介される著者のご母堂が遺されたノートは大変興味深いものです。当時のマレー半島でトラやヒョウが出たり、河にワニがいる話、ゴム園造成の苦労話、豊かな河の恵み、フルーツの話、イギリス風の生活を送っていた話など、当時の人々の生活がうかがい知れるものとなっています。
外国が今よりも遠く、日本の国力も現在ほどではなく、情報も少なかった、そんな当時の海外赴任生活は、今よりもずっと苦労が多かったのではないかと思います。けれども、この手記には不思議と暗いところが全くなく、明るい基調で統一されている事です。文が人を表している典型であるようなきがしました。
この序章により、本文への期待が高まります。
旅の途中での色々な出会った人々もこの物語への興味を示し、関わっていきます。著者の思い入れの深さが人々の気持ちを惹きつけたのだと思います。
そしてホテルの社長の力を借りて、昔の写真と同じ風景の場所を探し当てていく様子は、謎解きのようにも感じられ、読みながら興奮を共有することが出来ます。
そしてこの自らの生誕の地への旅を終えた後にマレーシアでおこった様々な出来事や、その後にマレーシアを訪れたりした時の事などが描かれます。
マレーシアで生を受け、日本で育った筆者が、再びマレーシアとのつながりを感じるというところに円環の完結を感じます。
海外生活を通し、同じような想いを持つ人は今も多く、これからもっと増えていくような気がします。こういったことを常日頃から自然に感る人が増え、自分の考えること、感じることをコミュニケートできる人が増えることが国際化につながるのだと思います。
僕もニューヨークでの留学時代を一方向のもので終わらせることなく、円環を描くような形でつなげていきたいと感じました。
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