移植のポップス
先日、僕の勤務している病院でドナーアクションプログラムというのが行われました。これは、脳死臓器移植のドナーとなりうる患者 さんの識別に始まり、御家族のケアも含めて臓器摘出までの過程を効率的に進めようとするものです。
僕は参加していなかったのですが、今回行われたものは話 の内容から、EDHEP(European Donor Hospital Education Program)のようなもので、悲嘆家族と医療者とのコミュニケーション技能を向上させる事を目的としたプログラムであったろうと思っています。
このドナーアクションプログラムこられていたKankeriさんという方をご紹介いただきました。もともと臓器移植にもかかわるようなお仕事をされていま すが、趣味で音楽の自主制作を されているとのことです。そのKankeriさんが、臓器移植コーディネーターをしている方にお会いした事をきっかけとして、ポップミュージックを作成されました。Kankeriさんから直接、CDをいただき、聞かせていただきました。心にしみわたるような歌詞が優しいメロディにのって歌いあ げられます。
テーマは Grief Careだそうです。Grief Careは、大切な人を亡くされた御家族の心を癒す事を意味します。歌詞では、そのテーマを見据えて短い言葉でかたられる物語が展開します。
ドナーとなる方の命の終わり。
その遺志により新たに命を授かった方の感謝の気持ち。
そしてその後、
『触れるたびに たしかに感じる ふたつの命重なる 』
という歌詞がリフレインされます。移植により病気を克服した方は本当にそれを実感されるのでしょうね。そしてその人の存在により悲しみが癒される方々もおられるのだと思います。名前も顔も知らない人たちの間にこころの絆がむすばれます。
音楽の力で、ドナーファミリーのみならず、多くの人々に暖かい心を移植する事ができたらいいなぁ、と思いました。
肝移植をうけた最初のオリンピックメダリスト、スノーボーダーのChris Klug選手も自伝(奇蹟が僕に舞い降りた―肝移植患者からメダリストとなったスノーボーダーの物語 )の中でこう言っています。
『僕は新しい肝臓を授かった。けれども、時には新しい目と心も移植されたのではないかと感じる事がある。特にサーフィンをやっている時や、山岳を見渡した りしていると、世界がいかに素晴らしいのかを改めて実感する。その時、自分が授かった贈り物への感謝の念がわき上がるのだ。』
彼は先日こうも言っていました。「僕の物語を日本の人たちと共有する事で、誰かを助ける事が出来ればとってもハッピーだよ。」
確かに彼は自分の体の中にもう一人の自分を感じ、感謝をどう表現したらよいのかわからない時もあったようですが、その後Chris Klug財団を設立し、移植医療の振興に力を注いでいます。
彼もこの曲で歌われている通り、『その価値に見合うだけの生き方を探して』いるのだろうなぁ、と思います。
曲は「こちら」で聴く事が出来ます。Kankeriさんのブログもお人柄が現れているようで素敵です。
Heart to HeartやKankeriさんのように自分の思いを「自分がやりたいかたちで」行動にうつしたり表現したりするという事はとても大切な事だと思います。
Kankeriさんありがとうございました。
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