菊と刀2
菊と刀―日本文化の型 (講談社学術文庫) の続きです。
おそらく60年前の日本人の価値観は現在とは大分違ったものであったに違いありません。当時の米国人の視線はむしろ今の僕たちの視線に近いのかもしれない、、、なんて思いながら読みました。
少なくとも当時の日本文化は、西洋人からすると奇怪なものだったようです。でもその一面は今でも変わらないようにも感じます。本書によれば次の様な表現になります。
「日本人は最高度に、喧嘩好きであるとともにおとなしく、軍国主義的であるとともに耽美的であり、不遜であるとともに礼儀正しく、頑固であるとともに順 応性に富み、従順であるとともにうるさくこづき回されることを憤り、忠実であるとともに不忠実であり、勇敢であるとともに臆病であり、保守的であるととも に新しいものをものを喜んで迎え入れる。彼らは自分の行動を他人がどう思うだろうか、ということを恐ろしくきにかけると同時に、他人に自分の不行跡が知ら れないときには罪の誘惑に負かされる。」
この、菊を愛でる様に優雅な美を愛好する一方で、刀に象徴される殺伐も賞賛する、という日本文化を表したのが本書の表題となっています。そしてその文化 的特徴が由来する精神構造を分析的に探り当てていきます。そして読み進むうちに、自分の行動規範の奥底にあってしかも意識すらしていないものこそ日本的な ものである事を認識させられました。
先日のボストン出張の時、複数の人から日本の文化のすばらしさを褒めたたえるコメントを聞きました。大変ありがたい事でしたが、殆どの人たちが「菊」の 部分への評価であるように感じました。「刀」の部分が併存し得る事を知ったとき、彼らにとっては相変わらず不可解なままなのだと思います。
そしてその彼らにとって不可解に感じられる価値観は、その度合いが大きいほど、僕たち自身で気づく事は難しいのかもしれません。
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