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小さな小さなクローディン発見物語

 京大教授にして細胞接着に関する細胞生物学の大家、月田承一郎先生の遺稿。

 副題が、若き科学者達へのメッセージと言うだけあって、若いサイエンティストの間で評判が高いようです。

やはり、同じ様な事に興味を抱く人たちには特に共感できる物語なのだと思います。共感の度合いが強ければ強い程、月田先生の淡々とした文章の向こう側にある無念さが強く感じられるのだと思います。専門外の人でも読めるようにかなり易しく書かれているので、一般の人でも読めると思いますし、サイエンスにおける新しい物事の発見における知的興味や興奮を共有できるかもしれません。

 ただ、月田先生はオクルディン、クローディンといった分子の生物学の解説を目的としてこの本を書かれている訳ではないので、その辺は内容は理解せずとも、「こう言った事を世のサイエンティストと言われるオタク達は楽しんで生きているんだな。」と感じれば良いのかと思います。

 メッセージは研究を楽しむ事、大切なものを見落とさない「視力」を鍛える事の大切さの二つに集約されると思います。

 1998年頃月田先生の講演を聞いた事がありますが、正直に言って、内容よりも、この人、こういう事好きなんだなぁ、という感想を持ったのを覚えています。そしてなぜか、講演会のあとの懇親会での月田先生の笑顔が印象に残っていました。(本の中で見るとこの笑顔は小さい頃、若い頃から変わらなかったようですね。)文章からは月田先生の人柄がにじみ出ています。

 「視力」については次の様な文章があります。

「研究の世界ではセレンディピティという言葉がよく使われます。偶然に出会った幸運を見逃さない能力、とでも言うのでしょうか。(中略)ところがともするとこの言葉は「犬も歩けば棒に当たる」と同義語のように使われる時があります。これは間違っています。確かに歩き回っていると大きな宝にぶつかることはきわめて稀にはあるかもしれません。(中略)多いのは、大きな宝のそば(いろいろな距離があると思いますが)をたまたま通りかかるというケースでしょう。その時、大部分の人は、気づかずに通り過ぎてしまいます。本当の意味でセレンディピティを持ち合わせている人は、皆が気づかない宝がすぐそばに落ちているのに気づくのです。」

本書の中ではこのセレンディピティを「視力」という言葉に置き換え、月田先生の研究の物語の中でこの「視力」がいかに大切なものであったのかを説きます。

 そして最後の2ページ程の月田先生がご自身について語られている文章、そして巻末の奥様の文章は多くの若き純真な科学者達が涙しながら読んでいる事と思います。

 短く、飾り気のない本で、商売気の全くない本ですが、作者の誠実さが伝わる好著だと思います。


小さな小さなクローディン発見物語―若い研究者へ遺すメッセージ

 

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