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学会後男二人飯

  学会後、同僚と別れて男二人飯。学会前後の男飯は心に残ることが多い。かつての知己とじっくり話をするからだと思う。今回、食事を共にしていただいたのは 先輩。共に同じ病院で研修医として同じ釜の飯を食べた兄弟子。でも、不遜を承知であえて言わせていただけば、心の戦友である。

 二人で会って話をするのは数年ぶり。5年くらいは経っているだろう。前回のとき、兄弟子は大きく飛躍した。それをお祝いしたのだけれど、この5年の間、兄弟子はさらに大きく飛躍した。僕は亀のようにゆっくり歩いている。兄弟子にも引っ張ってもらっている。未だに。

  振り返ってみれば出会ってから四半世紀になる。当時は二人とも研修医だった。共に過ごしたのは今から考えれば一年半ほどだったと思う。そんなに長くない。 でも、とても充実していたし、もっともっと長かったような気がする。話していると当時のことがフラッシュバックする。話題にならなかった思い出もたくさん ある。恐らくそれは兄弟子も同じであっただろう。

  僕たちが学んだ病院は地方の基幹病院だった。朝から晩まで仕事に追われて生活した。勉強嫌いだった僕を触発してくれたのは、兄弟子と僕たちの指導医の先生 方だった。みんな学術的な意識が高かった。インターネットなんて言葉も存在しない時代から、指導医の先生(師匠)はnature, science, Gastroenterology, Hepatology, Radiology, annals of internal medicineなどを全て自費で購入し、いつも持ち歩いていた。置き去りになったそれらの学術雑誌を見て、師匠が先ほどまでそこに確かにいたことを僕たちは知るのだった。大学病院でもない、一般の病院の先生で、そんな人、今で見たことがない。いや、大学にだってそうはいないだろう。兄弟子も当時から異彩を放っていた。抄読会でフランス語の論文を紹介したのは兄弟子以外に見たことがない。

  本当に自由な雰囲気だった。あの頃は楽しかった。サッカーもやったし、飲み会もした。今から考えれば大変恵まれた環境だった。その後は互いにまったく違う 道を歩んできた。兄弟子は僕とは全く違う畑で、いろいろな困難を乗り越えビッグになった。参考になる話をたくさん聞かせてもらった。

 せっかくなので、備忘録的に印象に残った話を記しておこうと思う。
  一つ目は、過去のキャリアを次に生かすこと。過去の経験が将来どんな形で生きるのか、それはその時にならなければわからない。でも、兄弟子の話を聞いてい て、それはどうも受動的なものではないように感じた。過去の経験が「生きる」のではなく、意地でも「生かす」という必死さがそこにあるような気がした。

 二つ目は目標に直結しない努力が、目標を達成する時には大きな力となりえる、ということ。裾野を広くする努力は地味だし、目標を見失いがちだけど、大切なのだと感じた。

 三つ目は物事は始まる前から結論が出ていることがあるということ。情報と事前の準備が大切だ。漫然と前を向いていても、目標が達成できるとは限らない。結果を出すことに真剣に向き合う姿勢だけでなく、そのための戦略を真面目に考える必要があると思った。

 みんな当たり前のような話だけれど、兄弟子に言われてストンと心に落ちたような気がする。

 そして最後に、「他人を信じなさい。それ以上に自分を信じなさい。」という言葉をいただいた。自分を信じて、もうちょっと頑張ってみようと思う。

 力をいただいた夜だった。

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