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キスカ島奇跡の撤退

キスカ島 奇跡の撤退 (新潮文庫) 」を読みました。書店にこの本が平積みにされているのを見て、以前に樋口季一郎陸軍中将を描いた「指揮官の決断(文春新書) 」を読んだときにキスカ島の話が触れられていたのを思い出したので手に取りました。

アッツ島玉砕の後、その隣のキスカ島にいた5000人を超える陸軍、海軍の兵士たちは、制空権、制海権をほぼ完全に握られた中で、米国に知られることなく、一人残さず撤退します。

この撤退を指揮したのが本書の木村昌福少将(当時)でした。

彼の海軍兵学校卒業の席次は下から二番目。「学歴」が大変重要視されていた当時の軍隊では出世などあり得ないはずの成績でした。しかし、実績を上げ艦隊指揮を任されるまでになります。そして最後には、キスカ島撤退の功績を認められ、大将の次、中将にまで上り詰めます。大佐より上の職位については、自身も想定しない大出世でした。

本書の中で、様々なエピソードが語られます。

給油艦「知床」艦長時代には、少尉候補生の練習航海任務後に横須賀へ帰投する際のこと。木村は独断で帰投ルートを変更し、三宅島に立ち寄ります。三宅島出身の乗員に、故郷に錦を飾らせるためでした。両親は「知床」に招待され、息子からハワイや南洋諸島の土産を手渡されました。当時、海外の土産は相当に珍しいものであったことでしょう。

また、攻撃した敵の輸送船から降ろされたボートへの砲撃を「撃っちゃいかんぞぉ」と、身を挺して止めたエピソードが記されています。そして、6隻の敵輸送船の全てから人員が退去し、安全な位置まで避難したことを確認してから沈没させたそうです。これを見た部下は感激したといいいます。

「たとえ戦意を喪失した者や非戦闘員であっても、戦場で敵側の命を守るために、身を挺してその前に立ちはだかるなど、ふつうの人間にできることではない。」

また、その他の場面でも、敵を撃つことよりも味方の遭難者救助に力を注ぐ場面が見られます。

「部下の人命を護りながら、できる限り敵の命を奪わず、敵軍全体を消耗させる」ことを理想とするのみならず、実践したところが偉いです。彼に全幅の信頼を寄せていた直属の部下のみならず、彼を正しく評価した人たちも偉かったと思います。

キスカ島撤退作戦は二度にわたって出撃します。濃霧の中を米軍に知られることなく全員撤退するというミッションインポッシブル。気候の条件に大きく左右されるなか、一度目の出撃では、海霧の発生が見込めないと判断し「帰ろう。帰ればまた来ることができるからな。」と言って作戦中止を決定します。

二回目の出撃ではいくつもの幸運が重なりました。

自艦同士の接触事故のため予定の日程7月26日から29日に遅れます。26日は敵艦隊が待ち構えていました。

その26日。敵艦隊はレーダが探知した島の反響映像を日本艦隊と誤認し激しい砲撃を仕掛けました。この補給のため、作戦決行の当日、米艦隊は補給のためキスカ島を離れていました。

そして29日の当日は作戦に絶好の濃霧でありながら、湾内入ると霧が晴れ、5000人を超える兵士の撤収がわずか50分で完了します。完璧なる任務遂行でした。

その後、キスカ島撤退をつゆ知らぬ米軍は、アッツ島玉砕と同様の激しい戦闘を想定します。100隻近い大艦隊でキスカ島を取り囲み、南西から人形を用いた偽装の突入まで行いながら、西側から34426人が上陸しました。「守備隊が健在である」という思い込みから各地で激しい同士討ちがおき、死者25人負傷者31人を出します。戦果は島に残された犬3頭のみ。「太平洋戦争アメリカ海軍作戦史」には「史上最大の最も実践的な上陸演習だった」と記されているそうです。

取材し、執筆に当たった筆者が木村昌福の人物像に心酔していることに共感出来る本でした。


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