2010年1月 6日 (水)

医系小論文テーマ 9-a 人工授精・体外受精の法理と倫理

素人的医系小論文演習事始 

 今回は課題9a「人工授精・体外受精の法理と倫理」です。

 

 生殖医療に限らず、臓器移植、脳死判定、再生医療などにおいても先端医療があらたな地平を切り開く時、そこにはつねに倫理的問題、法的な解釈の問題がつきまといます。それぞれの問題について議論が尽くされなければなりませんが、その議論は常に現実の状況を仮定した上になされるため、多くの場合、複雑多岐にわたります。

 さらに、議論の行方は、医療の進歩、社会的コンセンサスのあり方などによって大きく影響を受けます。

 生殖医療の特徴は、当然ながら新たな生命の誕生をサポートする事にあります。一生の中で、生殖機能を十分に発揮し、子孫を残す事は、生物が進化の過程で連綿と続けてきたものです。この点から、生殖行動も健康の一要素であり、何らかの障害があって子孫を残す事が出来ない場合、治療の対象となり得るという議論は理にかなっていると思います。

 1978年にイギリスで成功した体外受精は日本でも1983年に成功し、2004年の時点で体外受精によって、毎年18000人もの子供が誕生するまでになりました。これは同時に、この技術なしには子供を授かる事が出来なかった18000カップルにとっての福音である事も意味します。

 日本における肝細胞癌の死亡者数は年間30000人前後です。この数をみれば、体外受精は日本において特別な医療ではないと言えます。

 生殖医療は生殖における様々な問題を乗りこえようとします。体外受精技術はその一つにすぎません。時には卵子、精子を、時には胎児の育つ場(子宮)を第3者から提供してもらい出産する方法が模索されました。また、卵子、精子、受精卵を凍結保存する事で、たとえ死後であっても子供が誕生する可能性がでてきました。

 それらの技術の一つ一つについて、それぞれの時代において、医学的リスクと社会的な受け入れ状況を判断しながら医療としての妥当性を見極めることが必要だと思います。

 

その妥当性を判断する上でもっとも重要視しなくてはならないのは、生まれてくる子供の福祉と人権が守られる事です。

 本来、生殖医療は「親の子持ち願望」に応えるために開発されてきたものです。

 しかしそこには願望のみでなく、非常に重い責任が常に同居しています。生殖機能を発揮できない「患者」のみならず、そこで誕生する新しい生命にも影響を及ぼすものですので、生殖医療は慎重に考えるべき問題を永遠に内包していると言えます。この事は常に意識されるべきだと思います。


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